あんたは病人相手になにやってんだよ。
早く退いてくれよ、寝させてくれよ。
同じ歳の男女の力の差なんて、嫌でもわかるよ。
でも、だからって押し倒していいってわけじゃないでしょーが。
こいつなに企んでんだ。
黙ってじっ、と見つめていると、ふいに弟が私の耳元に唇をよせた。
耳元で低く、甘く囁かれる。
そのままぺろ、と耳朶を舐められ、思わず声が出そうになるのを抑える。
そのまま口元に手を当て、声が出ないように押さえた。
が、
弟にいとも簡単に退けられてしまった、無念。
でもこの状況はまずい。
なんでこいつは変なスイッチ入ったんだよ。
病人襲って楽しいのか、しかも実の双子の姉だぞ。
弟はそんなことを言って、私の唇に触れる。
こん中、って...。
あるわボケ。
なんとか押し返そうとするも、やっぱり敵わなくて...。
もうダメだこりゃ。
てかまず晩御飯食べようよ。
冷めちゃうじゃんか。
...は?
食べる?私を?
ちょっと待って言葉の意味がよくわからない。
鼻先が触れそうなくらいに顔を近づけてくる弟。
お互いの吐息が顔にかかり、私はいたたまれなくなって顔を逸らそうとする。
が、
弟に顎を掴まれて固定され、動けないようにされた。
誰か助けてくれ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!