図星かよ。
ホントにわかりやすい反応するなこいつ。
今にも泣き出しそうな声色で話す弟。
隣にヤオモモちゃんいるでしょーが。
心配とかさせたら、許さないからね。
弟にとっては、まだ話したいことがたくさんあるだろう。
けど、この人混みの中でずっと電話し続けていても、あまり意味がない。
帰る家は一緒なのだから、その時に聞こう。
名残惜しそうに言いながら、弟は電話を切る。
私はスマホを返そうと、緑谷くんに歩み寄った。
緑谷くんは返事をせず、駅前のテレビに釘付けだ。
だけど、表情はこわばっていて、目を大きく見開いていた。
どうかしたのかな。
私もつられてテレビを見上げる。
そこに映っていたのは、
そう。
確かにオールマイトだった。
だけど、姿が違った。
身につけているコスチュームは、間違いなくオールマイトのもの。
だけど姿は、雄英高校にいた教師の一人だった。
ってことは、オールマイトの正体は、あの人だったってことになる。
今の緑谷くんの表情からして、緑谷くんはオールマイトの正体を知っているように思える。
そういえば、二人の個性って似てるよね。
...まあ、どうでもいいか。
テレビに映るオールマイトは、既にボロボロ。
これが、あのNo.1のヒーロー...。
誰もが固唾を呑んで見守っていた。
やっぱり、オール・フォー・ワンには勝てないの?
そう思っていると、周りの人達がざわつきだす。
オールマイトは、たくさんの人から期待されている。
No.1ヒーローだから、平和の象徴だから。
それだけでたくさんの人たちへの期待に答えることは、どれだけ辛いことなんだろう。
ヒーローになるということは、そういうことなのかもしれない。
みんなの期待を背負って生きていかなきゃいけないのかもしれない。
周りの人の声に混じり、緑谷くんと爆豪くんも叫ぶ。
緑谷くんの目には涙がたまっていて...。
ただ、オールマイトを応援することしかできない。
なにもできない自分の無力さに、腹が立った。
みんなの声が、駅前にこだまする。
どうか負けないでくれ、と。
周りに混じり、私も声を張り上げた。
そうすることしかできなかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。