第111話

No.111
17,296
2020/10/04 04:55
あなた
ん、なんかあった?
轟焦凍
いや、そうじゃねえけど...。無事かどうか聞きたかっただけだ
あなた
緑谷くんから聞いたんじゃないの?
轟焦凍
...








図星かよ。





ホントにわかりやすい反応するなこいつ。







あなた
私は無事。爆豪くんも無事。ほら、これでいい?
轟焦凍
ああ...。よかった、ホントに
あなた
あのねぇ。私だって一応ヒーロー志望だよ?少しは戦うことだってできますー








今にも泣き出しそうな声色で話す弟。





隣にヤオモモちゃんいるでしょーが。





心配とかさせたら、許さないからね。







あなた
今どこにいるの?
轟焦凍
そっち向かって歩いてる。けど、人が多すぎて思った通りに進めねぇ
あなた
そっか。まあ、時間はまだあるからゆっくりおいでよ
轟焦凍
おう








弟にとっては、まだ話したいことがたくさんあるだろう。





けど、この人混みの中でずっと電話し続けていても、あまり意味がない。





帰る家は一緒なのだから、その時に聞こう。







あなた
あとは、家で話そう。焦凍
轟焦凍
...わかった。それじゃあ、な
あなた
うん








名残惜しそうに言いながら、弟は電話を切る。





私はスマホを返そうと、緑谷くんに歩み寄った。







あなた
緑谷くん、スマホ...
緑谷出久
っ...!
あなた
緑谷くん?








緑谷くんは返事をせず、駅前のテレビに釘付けだ。





だけど、表情はこわばっていて、目を大きく見開いていた。





どうかしたのかな。





私もつられてテレビを見上げる。





そこに映っていたのは、







あなた
あれって、オールマイト?








そう。





確かにオールマイトだった。





だけど、姿が違った。







あなた
あの人、学校にいた...








身につけているコスチュームは、間違いなくオールマイトのもの。





だけど姿は、雄英高校にいた教師の一人だった。





ってことは、オールマイトの正体は、あの人だったってことになる。





今の緑谷くんの表情からして、緑谷くんはオールマイトの正体を知っているように思える。





そういえば、二人の個性って似てるよね。





...まあ、どうでもいいか。







あなた
緑谷くん
緑谷出久
あなた
スマホ、ありがとね
緑谷出久
う、うん...。








テレビに映るオールマイトは、既にボロボロ。





これが、あのNo.1のヒーロー...。





誰もが固唾を呑んで見守っていた。





やっぱり、オール・フォー・ワンには勝てないの?





そう思っていると、周りの人達がざわつきだす。







モブキャラ
あんたが勝てなきゃ、あんなの誰が勝てんだよ...
モブキャラ(女)
姿は変わっても、オールマイトはオールマイトでしょう?
モブキャラ
いつだってなんとかしてきてくれたじゃんか!
モブキャラ
オールマイト頑張れーッ!
モブキャラ
負けるな!オールマイトーッ!








オールマイトは、たくさんの人から期待されている。





No.1ヒーローだから、平和の象徴だから。





それだけでたくさんの人たちへの期待に答えることは、どれだけ辛いことなんだろう。





ヒーローになるということは、そういうことなのかもしれない。





みんなの期待を背負って生きていかなきゃいけないのかもしれない。







緑谷出久
勝ってぇ!!
爆豪勝己
勝てやぁ!!








周りの人の声に混じり、緑谷くんと爆豪くんも叫ぶ。





緑谷くんの目には涙がたまっていて...。





ただ、オールマイトを応援することしかできない。





なにもできない自分の無力さに、腹が立った。







切島鋭児郎
頑張れオールマイトっ!負けるな!!
飯田天哉
オールマイトっ!!








みんなの声が、駅前にこだまする。







あなた
頑張って!!オールマイト!!








どうか負けないでくれ、と。





周りに混じり、私も声を張り上げた。





そうすることしかできなかった。

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