あれから、弟が何回も何回もいろんなものを持ってきて...。
さっきからこの会話の繰り返しだ。
正直、弟が選ぶより私が選んだ方が早いと思うんだけど。
でも、一生懸命悩んで選ぼうとしてくれている姿を見ると、なんだか申し訳ない。
まあ、私ももう少し店内を見て回ろうかな。
髪留めの他にも、手鏡やピアス、ネックレスやイヤリングなど。
品揃えが豊富だ。
と、
ひとつの髪留めが目に止まった。
星空をイメージしたシュシュだ。
綺麗な瑠璃色のシュシュに、小さな星の飾りが散らばられている。
ちょこん、と三日月のチャームが付いているのも、結構可愛い。
思わず手を伸ばした、その時だった。
私の手とともに誰かの手が伸びてきて、手が重なった。
思わず相手の方を見ると、手を伸ばしていたのは弟だった。
弟も少し驚いたようにして、私を見つめている。
シュシュを持ってスタスタと歩き出す弟に、思わず声をかける。
が、弟は振り返らずに、そのままレジへと向かっていく。
私がぼーっ、としている間に、弟はさっさと会計を済ませてこちらに戻ってくる。
紙袋を渡されてお金を返そうと財布を開くが、弟はいらないと言い続ける一方だ。
お礼を言えば、弟は満足そうに微笑んだ。
てか、よく私の好みわかったよね。
今思えば結構ぼろぼろだもんね、あんたの靴。
そろそろ買わなきゃって思ってたし、丁度いいのかな。
弟が靴屋に入っていったのを見届けて、私はすぐ側のベンチに座って待つことにした。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。