触れられることに、なぜか恐怖を覚えた。
カタカタと震える体は、言うことを聞かない。
突然ぼろぼろと涙を流し始めた私を見て驚いたのか、弟は慌てたように言い、私を起き上がらせる。
そのままギュッ、と私を抱きしめ、ぽんぽんと背中を叩く。
弟に抱きついたまま、言葉を続ける。
触れられることが恐かった。
普通の人なら、なに言ってんだ、ってなると思う。
だけど、私は...。
さっきまで受け入れていたというのに。
どうして、拒んでしまったんだろう。
自分でもわけがわからなかった。
悲しそうに弟の口から呟かれた、私の名前。
その一言には、いろんな感情が入り交じっていた。
誘惑...?
その言葉を聞いて、涙がぴたりと止まる。
思わず顔を上げると、弟も私を見つめてきた。
弟は、どこか悲しそうに笑う。
その表情を見て、胸が痛くなった。
私は覚悟を決めて、口を開いた。
自分のわがままであることはわかっている。
だけど、今触れられることにはどうしても恐怖を感じてしまう。
大人になれば、多少は触れられることについて理解しているだろうから。
弟は嬉しそうに笑うと、そう言って頷いた。
そう言って、私は優しく弟に笑いかけた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。