第60話

No.60
20,644
2020/10/07 22:01
顔を洗ったあと、弟はなにもせずに戻ろうとする。





その腕を、私は思わず掴んだ。







轟焦凍
なんだ?
あなた
なんだ、じゃないよ。寝癖だらけじゃん
轟焦凍
別によくねえか?
あなた
よくない。整えたげるからここ座って
轟焦凍
おう








髪ボッサボサの状態で学校行かれるのは、なんかやだ。





だから、なんか世話焼いちゃうんだよね。





弟はそこら辺にある椅子を持ってくると、私の前に座る。





弟が素直で本当に良かったと思うよ。







あなた
せっかく綺麗な髪してんだから、寝癖くらい直しなさいよ
轟焦凍
放っておけば直るんじゃねえのか?
あなた
直りません








クシを使って髪を整えてやる。





弟は元々髪質が良いせいか、絡まることがない。





対してケアもしてないだろうけど、なんでこんなにさらさらなんだか。







轟焦凍
あなたはいいのか?髪まだ結んでねえだろ
あなた
私はいいの。バスの中で結ぶから
轟焦凍
そうか








なんでそんな不満そうなの。





なにがあった。







あなた
なんでそんな表情してんの
轟焦凍
あなたが髪下ろしてんの、誰にも見られたくねぇ
あなた
なんじゃそりゃ







私、結構学校でも髪下ろしたりしてんだけど。





結び直す時限定ね。







あなた
なんで嫌なの
轟焦凍
わかんねえけど、やだ








理由になってないよそれ。





あーだこーだしているうちに、髪を整え終わる。





ん、いい感じにできたかな。







あなた
ほら、出来たよ
轟焦凍
お、ありがとな








髪質が髪質だからね。





整えやすくて助かったよ。





て、時間結構あるじゃん。







冬美
二人とも、楽しんできなよ?
あなた
うん。でも、ほとんど授業と同じことになりそうだけどね








鬼畜メニュー用意してそうだもん。







あなた
お姉ちゃん、寂しかったりする?
冬美
そうだね。お父さんとはあんまり話さないし、あなたと焦凍といる時間が多かったからね








お姉ちゃんはニコリと笑う。







冬美
でも、せっかくの林間合宿だものね。ちゃんと楽しんできて
あなた
ありがとう、お姉ちゃん








なんかあったら心配だけど、一応お父さんもいるものね。





うん、大丈夫だと信じよう。







轟焦凍
あなた、そろそろ行くぞ
あなた
あ、うん。じゃあお姉ちゃん、行ってきます
轟焦凍
行ってきます、姉さん
冬美
行ってらっしゃい二人とも。気をつけてね、楽しんできて








お姉ちゃんの言葉に頷き、私と弟は家を出て学校に向かった。

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