第655話

No.648
6,289
2021/11/27 09:52
轟焦凍
爆豪







背後から抱きしめてきたのは、思った通り、弟だ。







轟焦凍
さっきから思ってたんだが、ちょっとあなたに近すぎじゃねえか?
爆豪勝己
なに言っとんだてめぇ







そう言った弟を、爆豪くんは呆れたように見つめる。





いや、あのさ。





今みんないるんだけど。







あなた
ちょっと焦凍。離れてよ
轟焦凍
やだ







いや、やだじゃなくて...。





弟は背後から私を抱き込んだまま、爆豪くんを軽く睨めつけている。





私たちの異様な空気を感じ取ったみんなが、がやがやと騒いでいるのがわかる。







轟焦凍
あなたは俺のだぞ
爆豪勝己
知るかボケ
轟焦凍
爆豪には渡さねえ
爆豪勝己
だァから知らねえっつの!!頭沸いとんのかてめぇ!!







ああもう。





こんなとこで喧嘩しないでよ。





B組もいるってのに。







あなた
ちょっと二人とも、やめなってば
轟焦凍
だいたい、爆豪があなたに近ぇからだろ
爆豪勝己
こいつから近寄ってきたんだわ!!人をナンパ男みたいに言うんじゃねえ!!
轟焦凍
だからって頭撫でる必要なかっただろ
爆豪勝己
そんくらい別にいいだろーが!!なんでてめぇがんなこと決めんだよ!!







もう、この二人は仲が良いのか悪いのか...。





いや、悪いとは思うけどさ、喧嘩多すぎじゃない?





仲が良い時はほんとに息ぴったりだったりするのに。







相澤消太
爆豪、轟弟







そんなことを考えていると、突然、低い声が聞こえてくる。





びくりと肩を跳ねらせて声が聞こえた方を見れば、相澤先生がこちらを睨めつけているのが見えた。







相澤消太
くだらん喧嘩してないで、さっさと轟姉を離してやれ







ひええ...。





怒られていない私まで怯えてしまうほど、相澤先生の睨みはすごい。





二人はしゅん、と項垂れ、それぞれ小さな声で謝る。





弟は私を離すと、今度はぽすっ、と肩に頭を乗せてきた。







轟焦凍
...悪ぃ
あなた
わかったから退いて。次の試合見なくちゃでしょ
轟焦凍
...じゃあ、頭撫でてくれ
あなた
はいはい







みんなが見てる前でこんなことするのは抵抗あるんだけどな。





そう思いながらも、私は弟の頭に手を乗せて撫でてやる。







あなた
これでいい?
轟焦凍
あなた
じゃあほら、戻るよ







てか、いつの間にか爆豪くんどっかいっちゃってるし...。





なんか申し訳ないことした気分。





とりあえず、次の試合見なくちゃ。





モニターの前に移動しようとする、と、







轟焦凍
あなた








再び弟に声をかけられた。







あなた
なに?
轟焦凍
...帰ったら、甘えてもいいか?
あなた
...ん。いいよ







ほんと、こういうところだけはちゃっかりしてるよね。





弟は私の言葉を聞くと、嬉しそうに口元を緩めたのだった。

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