背後から抱きしめてきたのは、思った通り、弟だ。
そう言った弟を、爆豪くんは呆れたように見つめる。
いや、あのさ。
今みんないるんだけど。
いや、やだじゃなくて...。
弟は背後から私を抱き込んだまま、爆豪くんを軽く睨めつけている。
私たちの異様な空気を感じ取ったみんなが、がやがやと騒いでいるのがわかる。
ああもう。
こんなとこで喧嘩しないでよ。
B組もいるってのに。
もう、この二人は仲が良いのか悪いのか...。
いや、悪いとは思うけどさ、喧嘩多すぎじゃない?
仲が良い時はほんとに息ぴったりだったりするのに。
そんなことを考えていると、突然、低い声が聞こえてくる。
びくりと肩を跳ねらせて声が聞こえた方を見れば、相澤先生がこちらを睨めつけているのが見えた。
ひええ...。
怒られていない私まで怯えてしまうほど、相澤先生の睨みはすごい。
二人はしゅん、と項垂れ、それぞれ小さな声で謝る。
弟は私を離すと、今度はぽすっ、と肩に頭を乗せてきた。
みんなが見てる前でこんなことするのは抵抗あるんだけどな。
そう思いながらも、私は弟の頭に手を乗せて撫でてやる。
てか、いつの間にか爆豪くんどっかいっちゃってるし...。
なんか申し訳ないことした気分。
とりあえず、次の試合見なくちゃ。
モニターの前に移動しようとする、と、
再び弟に声をかけられた。
ほんと、こういうところだけはちゃっかりしてるよね。
弟は私の言葉を聞くと、嬉しそうに口元を緩めたのだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。