上鳴くんが関心したように声を上げる。
まあ、無理もないよ。
確かにすごいもの。
緑谷くんがあまりにも元気な声で言うもんだから、私は思わず小さく笑った。
なんか無邪気な子供みたいで、可愛いって思っちゃったんだよね。
あ、男子に可愛いは禁句か。
てか、もう私たちの番なんだね。
早いなぁ。
ぺたぺたと足音を鳴らしながら歩いていく爆豪くんの背中を、慌てて追いかける。
説明内容はかなりざっくりしてたから、正直詳しいことはよくわからなかったんだよね。
さて、結局なにをすればいいのやら。
言われるがままに、私と爆豪くんはプールに入る。
この季節にプールは冷たいかな、って思ってたけど、それほどでもなかった。
確かに簡単そうだった。
でもこのヒーロー基礎学の救助訓練が、ここまで簡単に終わってもいいものなのだろうか。
実際に水難事故にあったらどう助けるか、っていう目的はあるのかもしれないけれど、実はもっと別に目的があるんじゃないのかな。
プールに仕掛け?
みんなのを見学してる時は仕掛けに引っかかっていることなんてなかったと思うんだけど。
それもそっか。
でも、気になるなぁ。
少し離れたところから三奈ちゃんの声が聞こえ、私はプールを見回した。
きつい、ってことは、仕掛けにかかったってことだよね?
みんなの見てたのに、全然わからなかった...。
でも、とりあえず救助が先だ。
周りに気をつけながら探していかないとね。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。