これでよし、と弧を描いた唇で肉まんをかぷりと食む。
フルーツの汁とかもそうだよね。
昔弟がそうなっていたのをよく覚えてるんだ。
口が小さいのは今も昔も変わってないけど。
パク、と指についた欠片を口に入れると、爆豪くんの切れ長の瞳がみるみる開かれていく。
ちらりと目を向ければ、こちらを凝視している爆豪くんと目が合う。
黙ったままの爆豪くんの顔を覗き込むと、彼は驚いたように肩をビクつかせる。
どうしたんだろ。
なんで?
そう問いかける前に、ふいっ、と爆豪くんはそっぽを向いてしまった。
私なんかしたかな。
そっぽを向いたままだけれど、ちらりと見えた耳が真っ赤になっているのがわかる。
熱でもあるのかな。
爆豪くんはそう言って、ばっ、とこちらに振り向く。
私は彼の顔を見て、目を見開いた。
額から耳にかけて、真っ赤になっていたからだ。
そう言って、爆豪くんは立ち上がる。
えぇ...。
なんかごめん。
そのひと言に顔を上げ、思わず爆豪くんを見つめる。
爆豪くんはしまったとでもいうような表情をすると、私に気がついたのか、少し顔を赤くした。
そう言うと、爆豪くんは顔を赤くしたまま歩いて行ってしまった。
ぽつんと残された私は、再び肉まんを頬張る。
...爆豪くんの今の言葉、どういう意味なんだろ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!