第482話

No.479
7,232
2021/05/04 14:46
爆豪勝己
チッ、こんな時に限って...!







保健室に入ってから、爆豪くんはそう言って舌打ちする。





保健室には、誰もいなかったのだ。





リカバリーガール、どこ行ったんだろ。







爆豪勝己
...とりあえず、ベッドに降ろすぞ







そう言って、爆豪くんは私をベッドに降ろす。





どうしよう、頭痛いの治んないよ。







爆豪勝己
まだ痛てぇか?
あなた
痛い...







私に布団をかけたあと、爆豪くんはベッドの隣に椅子を持ってきて、そこに腰掛ける。







爆豪勝己
熱はねぇみてえだな...
あなた
うん...。ただ頭が痛いだけなの







爆豪くんは、私の頭に触れ、優しく撫でてくれる。







爆豪勝己
...轟から聞いた。てめぇ、すぐになんでも抱え込んじまう癖あンだろ
あなた
...
爆豪勝己
別に責めてるわけじゃねえから、ンな顔すんな







爆豪くんは、私から目をそらしたまま続ける。







爆豪勝己
優しいヤツほど、自分を責める、なんでも溜め込む癖がある...。てめぇにピッタリだろ
あなた
...







つまり、どういうこと...?





そんな思いで爆豪くんを見つめていると、彼は私の視線に気がついたのか、こちらを向いた。







爆豪勝己
俺ァてめぇのこと、すげぇ優しいヤツだ、って思ってんだわ
あなた







そう言って、ふっ、と柔らかく微笑む。





爆豪くんのこんな表情を見るのは、初めてだった。





私は驚き、大きく目を見開く。







爆豪勝己
...なあ、あなた
あなた
な、なに?
爆豪勝己
てめぇ、好きなやついんのか?







急にどうした。







あなた
いない、けど...
爆豪勝己
...そーかよ







私の言葉に、爆豪くんはなんとも言えない、複雑そうな表情を見せる。





ほんとになんなんだ...。





そう思っていて、気がつく。





私、爆豪くんに運んでくれたお礼言ってないじゃん。





そう思っていると、爆豪くんが椅子から立ち上がった。







爆豪勝己
んじゃ、俺ァ授業戻るわ。なんかあったら言えよ
あなた
あ、待って







ベッドから離れる直前、私は彼の腕を掴んだ。





振り向いた彼と、目が合う。





そんな彼に微笑みかけ、私は口を開いた。







あなた
私をここまで運んでくれて、ありがとう
爆豪勝己







爆豪くんが、驚いたように目を見開く。





が、







爆豪勝己
...おう







すぐにそう言って、私の頭を撫でてきた。





と思ったら、今度はぐいっ、と顔を近づけてくる。





え、なになに。





爆豪くんは私の前髪をわけ、じっ、と見つめてくる。







爆豪勝己
...
あなた
?爆豪く...!!







次の瞬間、額に柔らかい感触が伝わった。





ちゅ、というリップ音が聞こえるとともに、すぐにそれは離れていく。





それが爆豪くんの唇だと気がつくのに、時間はかからなかった。







あなた
ば、ばく...!?なん...!!?
爆豪勝己
ハッ、間抜け面







勝ち誇ったような笑みを浮かべ、爆豪くんはもう一度私の頭を撫でる。







爆豪勝己
んじゃな。ゆっくり寝てろや







そう言ってもう一度笑ってから、彼は今度こそ保健室から出ていった。







あなた
...







以前、爆豪くんにキスされたことが脳内で蘇る。





そして、今のも...。





このあと、私がしばらく顔を真っ赤にさせていたうえに、それのせいで眠れなくなったのはいうまでもない。

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