第623話

No.617
6,208
2021/08/16 09:40
冬美
おつかれ〜!







すかさずお姉ちゃんがそう言ったのを見て、父は口を開く。







エンデヴァー
...久しぶりだな







こういう時、なんて言えばいいのかわからない。





だから私は、無言で蕎麦をすすった。







冬美
あなたと焦凍はわざわざ外出許可いただいてね!先生にも上がっていただくつもりだったけど、遠慮するって







お姉ちゃんが、今の状況に至る経緯を話す。







冬美
とりあえず、大仕事おつかれ様でしたってことで...ね!







と、弟が父を見て、口を開く。







轟焦凍
傷跡...ひでえな







ちらりと見てみると、確かに大きな痣のようになっている。





言っちゃ悪いけど、弟と似てるような...。





いや、やめておこう。





弟の言葉を最後に、私と弟、それから夏兄は、無言で蕎麦をすすり続ける。







冬美
三人とも、おつかれくらい言いなさいな!今日は労おうって約束でしょ!







お姉ちゃんが私たち三人を見て、小声で話し出す。







冬美
せっかくお父さんが家族を顧みようとし始めてるんだから!嫌いだからって顔に出しすぎだよ!
エンデヴァー
聞こえてるぞ







と、夏兄が突然、立ち上がった。







轟夏雄
姉ちゃんごめん、やっぱムリっぽい、俺
冬美
なつ!







居間を出ていこうとした夏兄の肩に手を置き、父は口を開く。







エンデヴァー
夏雄。言いたいことがあるなら言え







夏兄はそれを聞いて、父を睨めつける。







轟夏雄
言えって...目ェ合わせたこともないくせに急によく言うね。俺さ、焦凍がそば好きなんて初めて知ったよ。あんたが俺たちと関わらせないようにしてたから







私は思わず食べる手を止めて、夏兄を見つめる。







轟夏雄
お母さんも姉ちゃんも、あなたも、何故か許す流れなんだけどさ。俺の中じゃイカレ野郎絶賛継続中だよ。変わったようで全然変わってない。俺たちは放ったらかし、聞こえてくるお母さんの悲鳴、焦凍とあなたの泣き声、燈矢兄のこともさ...!No.1になって強敵倒したところで、心から消えるハズない







夏兄はそう言いながら、障子に拳を叩きつける。







轟夏雄
勝手に心変わりして、一方的に縒り戻そうってか!気持ち悪いぜ!







私は思わず目を見開いた。





夏兄がこんなに感情をむき出しにするところを見るのは、初めてだったからだ。

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