第253話

No.253
10,953
2020/12/06 09:23
みんなから少し離れた場所へと連れていかれ、そっ、と降ろされる。





私は自力で座ることすらできず、壁にもたれかかった。







轟焦凍
待ってろ。今冷やすから








弟は右手を私に翳し、温度を調節しながら冷やし始める。







轟焦凍
大丈夫か?
あなた
ん...ごめん








私の言葉に、弟は無言で首を横に振る。





以前のヒーロー基礎学でも、私は火力を上げすぎてキャパオーバーを起こした。





そして今、二度目のキャパオーバー。





二の舞だ。





また迷惑かけちゃった。







轟焦凍
前に言っただろ。無茶すんな、って








私は黙って頷くことしかできなかった。





前に約束したのに、守れてないじゃんか。







あなた
ごめん.....あんたは特訓、戻りなよ
轟焦凍
嫌だ。お前を一人で放っておけるわけねぇだろ








弟のおかげで徐々に回復し、朦朧としていた意識もはっきりとし始める。





それでも弟は冷やすことをやめず、その場を離れなかった。







轟焦凍
前まではキャパオーバーとかなかっただろ。なんで急に...
あなた
...それはシンプルに、火力を上げすぎたせいだと思う








以前リカバリーガールが言っていたように、疲労のせい倒れてしまうのもあるかもしれない。





けどキャパオーバーに関しては、一気に火力を上げすぎたせいだと思っている。





普通に炎を使ってる時は、そんなこと一度も起きたことはないのだから。







轟焦凍
いったいどれだけ火力上げたんだ
あなた
たぶん、お父さんと同じくらいかな
轟焦凍
親父と?








弟は少し不満気な表情を見せる。





嫌いなのはわかるけどさ。





そんなに嫌そうな顔しないの。







あなた
今回のキャパオーバーの原因は、たぶん赫灼熱拳を使ったせい。そのために火力を一気に上げたからだと思う
轟焦凍
...なんで親父の技なんか使ったんだ
あなた
それは...








私は少し考えたあと、口を開いた。







あなた
燈矢兄さんなら、この技をどうやって改良したのかなって








幼い頃、燈矢兄さんが私に一度だけ見せてくれた技。





それが、赫灼熱拳だった。





燈矢兄さんの青々と燃える蒼炎は、とにかく綺麗だった。





そんな技を、私もいつか出せるようになりたい。





だから使った。





正直なところ、私は父よりも、兄に憧れたから。

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