部屋に戻ってきて早々、弟に抱きつかれた。
そして今の状態である。
何回も言うけど、あんたのもうちょっとはもうちょっとじゃないでしょーが。
たまには私じゃなくてお父さんにでも甘えとけや。
ありゃ、GANGIMARI状態だ。
私の中のお父さんが泣いてる。
何故だ焦凍ォォォ!!、って叫んでる。
なんたってお父さんは焦凍Loveだからね。
滝のような涙を流すか、炎で家丸焦げにするよ、絶対。
お父さん戸惑うだけだと思うよ。
私のこと、なんとも思ってないと思うよ。
そう言おうとして、思わず口をつぐむ。
と、
突然、背中に腕が回ったかと思うと、そのまま引っ張られた。
弟は布団に寝転がり、私はその弟に上から抱きついている状態になる。
なにやってんだよ。
どこまでもマイペースなやつだ。
てか、離してくれないかな。
この状態じゃ寝れない。
駄々をこねる小さな子供のように、弟はムスッ、と頬を膨らませる。
私を抱きしめたまま、弟はごろん、と横になる。
仰向けから横向きになればいい、ってことじゃないんだよ。
離せ、って言ってるの。
弟はそう言うと、私の肩に顔を埋める。
そのせいで、弟の表情はよく見えない。
けれど、あたかもなにかを繋ぎ止めようとしているような声に、私はなにも言えなくなった。
承諾すると、弟は抱きしめる力を強めてきた。
だから苦しいんだってば。
この握力ゴリラめ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。