結局あのまま、私は弟の部屋に連行された。
部屋に入ってからそう言って弟を軽く睨む。
そうすれば、弟は意外にもあっさりと私を降ろした。
弟は黙ってこちらを見つめていたかと思うと、突然、私の首元に顔を埋めてきた。
思わず声を上げると、弟は一旦、顔を離してこちらを見つめる。
弟は私の問いには答えず、再び首元に顔を埋めてくる。
それから、がぶっ、と獲物を食らう猛獣のように噛み付いてきた。
それを少し繰り返してから、顔を上げる。
また噛み跡つけちゃって...。
もう何回目だよ、これ。
そう言ってから、気がついた。
...着替えは全部、部屋にあるということに。
そう言って弟は、私の頬を優しく撫でる。
と思ったら、とんでもない言葉を口にした。
弟が言ったひと言に、私は一瞬弟がなにを言っているのかわからなくなった。
抱かせろ...?
抱く、って...。
はあ!?
意味を理解した瞬間、私は一気に真っ赤になった。
姉弟とカレカノじゃ全然違うじゃん。
弟は不満そうに頬を膨らませる。
お互いにそういう意味で好いているのはわかってるとしてもだよ。
ヒーロー志望がバレなきゃ何やってもいいみたいな言い方しちゃダメでしょ。
そう言うと、弟は残念そうにため息をついた。
いやだってさすがにダメだよ。
姉弟だもん。
年齢の問題じゃないんだってば。
話通じてないじゃんか。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。