第121話

No.121
16,603
2020/10/08 09:19
轟焦凍
あなた、荷造り終わったか?








弟が襖から、ひょっこりと顔を覗かせる。





入っていいなんて一言も言ってないんだけど。







あなた
終わったよ。そっちは?
轟焦凍
俺も終わった








明日からいよいよ寮生活。





私たちはそのために、部屋の荷物を整理していた。





寮かあ。





ちょっと楽しみかも。







轟焦凍
なあ
あなた
んー?
轟焦凍
縁側、行かねえか?
あなた
...そうだね、行こっか








私は頷き、弟と縁側に向かった。









***









あなた
ん〜、涼しいっ!








私はそう言って、軽く伸びる。





やっぱりいいな、ここ。







あなた
明日から寮だし。あんまり来られなくなるね、ここ
轟焦凍
そうだな








そう思ったら、少し寂しい気持ちになる。





今までずっと暮らしてきた家から離れて生活するとなると、楽しみな気持ち半分、不安な気持ちが半分という感じだ。





ちょっと心配だ。







轟焦凍
まあ、俺はクソ親父の顔を見なくて済むようになるし、別に寂しくなんてねえけどな








たぶんこれ、お父さんが聞いたらめっちゃ怒ると思うよ。





それか泣くかのどっちかだね。





弟に対して、お父さん結構甘いとこあるからなあ。





変なとこで親バカなんだよね。





ま、弟には全く伝わってないだろうけど。







あなた
てか、なんで縁側行きたいなんて言ったの?
轟焦凍
膝枕








は?







轟焦凍
膝枕してほしかったから
あなた
んなもん、部屋でもできるでしょーが
轟焦凍
ここの方が涼しいからいいんじゃねえか、って思った








いや、確かに涼しいんだけども。





なんで膝枕...。







轟焦凍
だめか?
あなた
...はいはい、わかったよ








これ、まさか寮でもやれとか言わないよね。





やったとしたら見つかる確率100%だよ、たぶん。





ま、さすがに言ってこないか。





....そうであると信じたい、うん。







あなた
もうちょいこっちにして。なんかくすぐったいから
轟焦凍
おう








弟の髪質が良いおかげで、膝がちくちくと痛むことはない。





ただ、少しくすぐったい。





弟は仰向けになって、私を見上げる。





私と目が合うと、嬉しそうに笑った。







轟焦凍
寮だったら、二人の時間あんま無くなるよな
あなた
そうだね。友達と過ごすことが多くなるかなー
轟焦凍
...もう甘えちゃだめなのか?
あなた
...別に。勝手にすればいいじゃん
轟焦凍
なら甘える
あなた
はいはい








胴に腕を回し、ぎゅう、と抱きついてくる弟。





一瞬私の頭の中で、コアラになった弟の姿が浮かんだ。

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