第167話

No.167
14,632
2020/10/19 12:02
あなた
で、どれにするの?








学校が終わり、放課後。





私は弟と一緒に、以前行ったクレープ屋に足を運んでいた。





約束したからね。







轟焦凍
...イチゴ
あなた
え、イチゴ?
轟焦凍
おう








珍しい。





イチゴのクレープ頼むなんて。





絶対ありえないと思ってた。







あなた
なにかあった?
轟焦凍
なんでだ?
あなた
あんたがイチゴ頼むなんて、珍しいからさ
轟焦凍
...たまたまだ








さっきの沈黙はなにさ。







あなた
ま、いいけど








イチゴのクレープ二つ、と頼み、出来上がるのを待つ。







あなた
久しぶりに来たね
轟焦凍
だな。俺は切島と1回だけ来たけど
あなた
え、切島くんと?








男二人でこんな可愛いお店入って、クレープ食べてたの...。





切島くん、恥ずかしかっただろうなあ。







轟焦凍
緑谷の見舞いに行った帰りに、二人で寄ったんだ
あなた
ふーん。意外








弟のことだから、その時はなんの躊躇いもなかったんだろうな。





出来上がったクレープを受け取り、ひとつを弟に渡す。





ひとつのテーブルに対して向かい合って座り、クレープをひとかじり。





ん、美味しい。







轟焦凍
あなた
あなた
ん?
轟焦凍
ひとくちくれ
あなた
え、一緒じゃん
轟焦凍
いいから








なんで同じクレープにしたにも関わらず、ひとくちくれ、なんだよ。





味一緒じゃん。





なんて思いながら、弟の口元にクレープを持っていってやる。





弟はそれを、かぷり。





小さく齧った。







轟焦凍
...
あなた
どしたの?








嬉しそうに口元を緩ませた弟に、思わず尋ねる。







轟焦凍
いや。やっぱり美味いな、って
あなた
まあ、評判のお店だからね
轟焦凍
そうじゃねえ








弟は穏やかな目で、私を見つめていた。







轟焦凍
あなたと食べるクレープが、一番うめぇ








オッドアイを細め、弟は優しく笑う。





私は何も言えず、ぽかんと口を開けていた。





急な弟の笑顔が、少し衝撃だったから。







轟焦凍
あなた?
あなた
え、あ、なんでもない








弟の声で我に返り、私はなんでもないと言ってクレープにかぶりつく。





イチゴの酸味と、クリームの甘さが絶妙なバランスを醸し出している。





美味ァ。







轟焦凍
口元、付いてんぞ
あなた
え、どこ
轟焦凍
取ってやるから動くな
あなた
いや、自分でやるからいいって...








言い終わる前に、弟が人差し指で、私の口元に付いているであろうクリームを拭った。





あれ、これデジャブ...?





そんなことを考えていると、弟は指に付いたクリームをぺろり。







轟焦凍
やっぱ、甘ぇな








なんか、うん。





こいつ、こんなに色気(?)あるやつだったっけ?

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