中庭にて。
ミスコンのパフォーマンスの練習に取り組んでいた私は、思わず声を上げた。
言った通り、パフォーマンスが完成したのだ。
緑谷くんに提案されたバレエを少しアレンジし、空中で舞う。
まずはその場で大きくジャンプし、空中で炎を上手く調整しながらバランスを保つ。
あとは地面に着地することなく、空中を歩くかのようにしてステップをふみ、舞い続ける。
神楽とかもちょっと考えたけど、自分には難しいかな、って思ったから、結局バレエにしたんだ。
でも、無事に完成できてよかった。
残りの日数は、炎の威力を上手く調整できるようにしよう。
なんなら、1回通してやってみようか。
そう思い、私はなんとなくで位置につく。
そこからまずは、高く飛び上がる。
落ちる、というタイミングになってから、足から炎を出してまた飛び上がる。
...炎はただ出すだけじゃ面白くないから、丸を描くようにして下に噴射したらいいかも。
そう思いながらなんとなくで実践してみると、意外と上手くいった。
よし、本番でもこれはやろう。
クルクルと空中で回り、また炎を円状に出して飛び上がる。
それをしばらく繰り返したあと、手からそれぞれ赤い炎、白い炎を出して体を回転させながら、上の方へと昇る。
そうすれば、二色の炎はリボン状に弧を描きながら、綺麗に混ざり合っていく。
おお、結構上手くいってるじゃん。
空中を歩くようなイメージ、って結構難しいものだとばかり思ってたけど、案外簡単なんだね。
最後に、先程作った二色の炎の輪を下降する際に通り抜けて着地をし、パフォーマンスは終了。
うん、上出来だ。
これなら本番も大丈夫そう。
と、
すぐ側で声が聞こえ、振り向く。
そこにいたのは、緑谷くん。
彼のアドバイスなしでは、たぶんなにも思いつかなかった。
感謝しなきゃね。
緑谷くんはそう言うと、にっこり笑う。
それにつられて、私も笑った。
パフォーマンスは忘れないように、本番までにもっと練習しなきゃだけど。
クラスの出し物に関しても、もっと頑張らなくちゃね。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!