誰かの声が聞こえる。
これは誰の声?
ていうか、ここはどこなの?
今の声は、爆豪くんだ。
でも彼の声と同時に、金属が擦れる音のようなものも聞こえる。
私は目を閉じているため、視界は真っ暗だ。
ガシャン、ガシャンという音に混じり、爆豪くんの怒声。
なにをそんなに怒っているの?
なにが起きたの?
ここは、どこ?
爆豪くんとはまた別の、違う男の声。
だけど、どこかで聞いたことのある声だ。
しかもあんまりよくない思い出の方。
誰だったかな。
爆豪くんは、いったい誰と会話をしているの?
目を開けようとするが、瞼が上がらない。
眠らせた?
私を?
そういえば私、林間合宿に来ていて...。
森でヴィランと遭遇して、爆豪くんが連れ去られて...。
ってことは、ここはヴィラン連合が集う基地?
そこまで思考が追いついたあと、重い瞼がわずかに開いた。
そんな私に気がついたのか、爆豪くんが反応する。
彼にしては珍しく、どこか焦っているように見えた。
目を完全に開けると、目の前にはヴィラン連合の集団。
ふと手元を見ると、私の手には鎖が巻き付けられていた。
どうやら逃げることができないように、固定されているようだ。
後ろにもなにかが固定されていて、動けない。
唯一動くのは、頭だけ。
腕や足は、動けないようにされていた。
私は思わずムッ、として、言い返した。
ヤケクソ気味に言った爆豪くんに、私は少し目を見開く。
本当に言ってくれるとは思っていなかったから。
そう言って、一人のヴィランが私たちに目を向けた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。