夜。
私は外に出て、お姉ちゃんと電話をしていた。
話すのはかなり久しぶりだ。
それを聞いて安心する。
ちょっと心配だったけど、元気ならよかった。
少し間をあけて答えると、お姉ちゃんは「そっか」と呟く。
お父さんがNo.1だと発表されてから、ずっと気になっていたことを口にしてみる。
もう伝えたんだろうか。
あと、しばらく会っていないからどうしているのか、単純に気になる。
具合が悪くなったりしてないだろうか、元気にしているだろうか、などなど。
聞きたいことは山ほどあった。
その言葉を聞いて、思わず口元が緩む。
お母さんに会いたいな。
もう随分会ってないんだもの。
よし、仮免取ったら、弟も連れて会いに行こう。
手紙で話せない分、直接会って話したいから。
と、
突然耳元で聞き慣れたテノールボイスが響き、私は声を上げる。
慌てて振り向くと、いつの間にか弟が私のすぐ後ろに立っていた。
ズボンのポケットに手を突っ込み、不満そうな表情をして私を見つめている。
な、なんでそんなに怒ってるのさ。
弟の剣幕におされ、私は思わず後ずさる。
が、弟はそんな私に構わず詰め寄ってきて、私のスマホを奪った。
あーもう、知らないからね。
と思った瞬間、電話越しにお姉ちゃんの声が聞こえてくる。
弟は電話相手がお姉ちゃんだとわかると、羞恥からか一気に顔を赤くした。
そんな弟を、私はジト目で見つめる。
ぶわあっ、と火が出そうなくらいに顔を真っ赤にした弟を見て、私は思わず笑う。
電話越しに聞こえてくるお姉ちゃんの声は、不思議そうに「どうしたの?」と聞いてくるばかりだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。