どんだけ唾つけとんだこの人。
相澤先生とマンダレイの会話を聞きながら、私は唾をつけまくっているピクシーボブを見る。
そう言った緑谷くんの頭を、ピクシーボブが再び掴んだ。
これ、さっきと同じじゃん。
ピクシーボブに凄まれ、緑谷くんは慌てて誤魔化すように言った。
緑谷くんが指さした先には、小さな男の子の姿。
そういえば、森に入る前から居たよね。
プッシーキャッツの二人と一緒にいるのは見たけど、確かに誰の子だろ。
男の子、洸汰くんは私たちをじっ、と見つめたまま、動かない。
あの目からして、私たちと仲良くするつもりはないように見えた。
ピクシーボブから解放された緑谷くんが、洸汰くんに近づいて手を差し出す。
が、
洸汰くんはその手を握り返すことなく、緑谷くんの大事なところを容赦なく殴った。
うわ、っ...。
見ていた私たち、特に男子は、顔をこわばらせた。
いや、さすがに女子でもわかるよ。
絶対に痛い。
緑谷くんは殴られたところを押さえ、真っ白になってしまった。
お茶子ちゃんは口元を押さえて、どこか哀れむような表情をしている。
そんなこと言わんでいいんだよ。
てか、その顔でそんなこと言わないでくれ。
大事なところを押さえて倒れ込む緑谷くんを、飯田くんが慌てて支えた。
さすがは飯田くん。
どこかの誰かさんみたいに、下品な言葉は使わないんだね。
って、そんな場合じゃない。
そう言った飯田くんを、洸汰くんは睨むようにして見る。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。