すっかり抵抗する気が失せた私。
それを知ってか、弟はいつもより甘えてくる。
いつものポーカーフェイスは捨てて、明らかに不満そうな表情をする弟。
今ので不満になる要素あったか?
まず嫌いだったら甘やかさないでしょーが。
言ってほしいだけだろ、絶対。
言ってから、かあっ、と顔が熱くなった。
これじゃあまるで恋人同士みたいじゃないか。
好きだなんて、意識して言うとこんなに恥ずかしいものなんだね。
弟は嬉しそうにしているけど。
このド天然野郎。
恥というものがないのかあんたには。
なんて言ったら、あんたはきょとんとするんだろうね。
高校生の双子が一緒に寝る?
ありえんでしょ。
しかも異性だよ?
いくら双子だからといって、さすがにまずい気がするんだけど。
思わずそう言うと、弟はしゅん、とした様子になった。
心做しか、犬の耳が垂れているように見える。
きっと気のせいだな、うん。
弟は少し悲しそうな瞳で、じっ、と私を見つめる。
結局、私が折れるハメになってしまった。
弟はぱあっ、と花が咲いたかのような明るいオーラを撒き散らす。
私は弟の目に弱い。
今のように悲しそうな目で見つめられると、どうしても甘やかせずにはいられない。
あとは、態度。
体格とかは大人に近いのに、甘えん坊なところは昔から変わらないんだよね。
成績とかもいいのになあ。
甘えてきてくれるのは、まあ嬉しいんだけども。
もうちょっと自立してほしいというか、なんというか。
すっごい変な気持ち。
でも、仮に峰田くんに甘えられたとしても、私だったら殴るかもしれない。
じゃあなんで弟は大丈夫なんだろう。
たぶん、緑谷くんや爆豪くんでも大丈夫かな。
まあ、爆豪くんが甘えてる姿なんて想像できないけど。
三人に共通することと言えばなんだろう。
イケメン?
もしかして私、面食い?
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!