放課後の寮でソファーに座ってくつろいでいると、弟が突然そう言ってきた。
ミスコンのことは言えないからなぁ。
弟は私の隣に腰を下ろすと、じっ、とこちらを見つめてくる。
隠すのもめんどくさくて、私は率直に思ったことを口にする。
が、そう言った瞬間、なぜか弟は私を抱きしめた。
言い訳になってないじゃん。
てか、共有スペースでこんなことしてたら...、
ほらきた。
峰田くんがギャアギャアと騒ぎ出したせいで、みんながこちらに集まってくる。
ああもう...。
また黒歴史になるよこれ。
頼むから変なこと言わないでくれ。
ただでさえ恥ずかしいんだから。
追い討ちをかけるようにして、弟は爆弾発言をする。
周りのみんなが黄色い声を上げる中で、私は顔を真っ赤にして弟の胸板を押して離れようとする。
弟は私にしか聞こえないような小声で、囁く。
からかうような笑いを含んだ、甘くて低いテノールボイス。
いつもとは違う、大人っぽい声が鼓膜まで響き、私はさらに頬を赤く染める。
みんなはそう言うけどさ。
こんな会話、絶対聞かせられないよ...。
緑谷くん、私の表情から心境を分析しないでくれ...。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!