弟は立ち上がり、ベッドの縁に腰掛ける。
そう言うなり、弟は私に抱きついてくる。
もう、誰かに見られたらどうするのよ。
そう思いながらも、私は弟の背中に片腕を回し、もう片方の手で頭を撫でてやる。
明確な原因はわからないけど、たぶん、寝不足からくる頭痛だったのかもしれない。
ミスコンや仮免のことで頭の中がいっぱいになっていたせいでもあるだろう。
でも、ミスコンのパフォーマンス練習で、最近寝るのが遅くなってきているんだ。
それが続いたせいなのかもしれない。
安心したように微笑む弟を見て、私も笑う。
そう言いながら、私はベッドから降りようと床に足をおろす。
それにしても、ちょっと寝すぎちゃったな。
過保護発動しかけてるよ。
てかリカバリーガール、戻ってきてないんだね。
どこ行ったんだろ。
私たちは保健室を出て、教室に向かう。
...さすがに誰もいないか。
思った通り、教室内はしーん、と静まり返っていた。
みんな今頃、なにしてるかな。
バンド隊やダンス隊は練習してるかも。
私も早く、パフォーマンスの練習しなきゃ。
早く練習しなきゃ。
やりたいパフォーマンスは決まったんだから。
それにこれは、今私がやりたいことなんだ。
無理してやってるんじゃなくて、自分の意思だ。
こんなに楽しみだと思った文化祭は、初めてかもしれない。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。