第483話

No.480
7,276
2021/05/05 06:12
あなた
...







窓から差し込んでくる光で、目を覚ます。





窓の外を見ると、既に日が沈んでいる真っ最中だった。





え、もう夕方になっちゃったの?





どんだけ寝てたんだよ、私。





てかお昼ご飯食べ損ねたから、お腹空いた...。





と、左手に違和感を感じて目を向ける。







轟焦凍
...







目線の先にいたのは、弟。





私の左手を握ったまま、ベッドの縁に頭を乗せてスヤスヤと眠っていたのだ。





いつからここにいたんだろ、こいつ。







あなた
...







時計を見ると、時間は既に4時半をまわっていた。





私、5時間近く寝てたんだね。





今日の夜寝られないかも。







轟焦凍
...







ふと、弟の寝顔に目がいく。





相変わらず綺麗な顔立ちしてんなぁ。





...お父さんって、昔こんな感じだったのかな。





いや、想像できない。





あの屈強な見た目だし、弟の頃くらいの時はムキムキだったのかも。





...いや、待てよ。





弟も今、結構筋肉ついてるよね。





腹筋とかもバキバキに割れてるわけだし。





細身のマッチョとはいえ、将来お父さんのようになる、って可能性もなくはないわけだ。





げ、なんかやだな。





私は頭の中でその姿を想像し、顔を顰める。





お父さんには申し訳ないけど、弟はこのままでいてほしいや...。







轟焦凍
...ん







そんなことを考えていると、弟が声を上げる。





改めて見れば、弟はゆっくりと目を開いた。





ただ、まだ覚醒しきっていないようで、ぼーっ、としている。





間抜け面。





いつ気づくのかという思いで見ていると、弟は突然、私の手に頬擦りし、キスを落とす。





猫かな...?





てか、完全に寝ぼけてるね。





弟は満足したのか、むにゃむにゃと言いながらもう一度寝ようとする。





私は予想外すぎる弟の行動に少し顔を赤らめつつ、弟の髪をわしゃわしゃと混ぜてやった。







轟焦凍







途端、がばっ、と顔を上げる弟。





私と目が合うと、ぱちぱちと瞬きを繰り返した。







轟焦凍
あなた、いつから、起きて...
あなた
あんたが私の手にキスする前から
轟焦凍
...







と、弟の頬が桃色に染まる。





自分からやっといて、なに照れてんだよこいつは。





...まあ、私も人のこと言えないけど。

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