そう言う爆豪くんだが、なんだかんだ言って片付けを手伝ってくれるのは本当に助かる。
夜嵐くんのひと言で、子供たち全員が大きな声でいいお返事。
それぞれほうきとちりとりを持って、氷を片付け始めた。
暴食魂とか言ってボールを投げてきた子が、弟に話しかけているのが見える。
そんな会話を聞きながら、私は氷を溶かす作業を続ける。
今日は大変だったけど、結果的に上手くいってよかったな。
同じく氷を溶かす作業をしている爆豪くんが、手を動かしながら話しかけてくる。
へぇ、いるかと思ってたのに。
そう言いながら、私は作業を続ける。
爆豪くんが、なにか言いたげな表情でこちらを見つめていたことなど知らずに。
***
片付けが終わって、子供たちは帰る時間。
そう言いながらも、みんなは子供たちと戯れている。
と、先程の子が私の方に駆け寄ってきた。
私はしゃがみこみ、目線を合わせる。
私は驚いて目の前にいる男の子を見つめた。
私のようになりたいと言ってくれる子がいるなんて、思わなかったから。
今までそんなこと、言われたことなかったから。
...少なくとも、私を目標としてくれるなら。
私はふっ、と微笑んで、目の前の小さな頭に手を乗せた。
そう言うと、ぱあっ、と表情が輝いた。
と、
先生の声が聞こえた。
どうやらもう帰るみたい。
そう言って駆け出していく背中を、私は黙って見送る。
が、くるりとこちらに体を向けると、ぶんぶんと大きく手を振ってきた。
同じように手を振り返すと、その子は嬉しそうに笑った。
それから私たちも先生に「ありがとうございました」と頭を下げ、今日の仮免講習が終了した。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。