バスに揺られて着いた場所を見て、私は思わず無言になる。
他の人たちも同様だ。
一部の人たちを除いては。
3人が口々にそう言って、施設を見上げる。
というか、室外とか言ってたけど結局室内じゃん。
ちょっと期待して損した気分...。
まあ、確かに今にも崩れそうなくらいにボロい。
こんなとこでなにするんだろ。
救助訓練か。
えっと、私のペアは弟と爆豪くんになるのかな。
仮免講習が始まってからなんだけどね。
爆豪くんが少し、弟に優しくなったような気がするんだ。
この間はブランコ一緒にこいでくれたり、今みたいにあんまり突っかかることもなくなったし。
仮免講習ってすごいね。
***
施設は外観だけじゃなくて、内部もほぼ想像したいたものと同じだった。
まあ、うん。
すぐに崩れそうってことね。
弟はそう言って、エレベーターのボタンをカチカチと押す。
私も試しに近くにあったエスカレーターの方に行ってみたが、反応はなかった。
思わずムッ、とすると、爆豪くんは可笑しそうに笑う。
そう言って先を歩く爆豪くんを、私と弟は慌てて追いかける。
他の人たちも探してるだろうけど、どこにあるだろ。
この施設無駄に広いから、見つけるの大変だよね。
でもその前に、この施設が壊れないかどうかが心配だよ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!