会場に着き、コスチュームを持って着替えに行く私たちを二人が見送る。
補講会場と書かれてある看板に従い、私たち三人は廊下を歩く。
...お父さん、オールマイトと遭遇してないかなぁ。
もし遭遇してたら修羅場だよ、きっと。
と、
声が聞こえ、私は顔を上げる。
見れば、夜嵐くんがこちらに手を振りながら向かってくるところだった。
お父さん、夜嵐くんとも会ったらやばそう。
会わないといいけど。
なんて思っていると、知らない人の声がした。
目を向けると、そこにいたのは士傑の制服を着たひとりの女子がいた。
えっと、誰?
どうやら弟のことが気に入ったらしい。
さん付け、ってことは、2年生とかかな。
少なくとも、先輩であることには間違いなさそうだ。
それはわかったよ夜嵐くん。
ひとり展開についていけないままでいると、また別の声がした。
えっと、誰?
なんかさっきから知らない人ばっかり出てくるんだけど。
なにこのカオスメンバー。
関わると疲れるやつだよ、絶対。
***
そう言って弟は、私の頭にぽん、と手を置いて軽く撫でてくる。
だからみんなが見てる前でこんなことしないでよ。
弟はなにも気にしていない様子で私の頭を撫でたあと、更衣室へと向かっていく。
ほんっとにマイペースだな、あいつ。
私は軽くため息をついてから、同じように更衣室に向かった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!