第563話

No.558
6,382
2021/07/09 14:35
あなた
少し寝なよ
轟焦凍
うん...







目元に残っている涙を拭いながらそう言うと、弟は力なく頷く。





が、







轟焦凍
さっき寝たばっかだから、寝れねぇ







弟はそう言って、私を見上げてくる。





まあ、気持ちはわかるけど...。







あなた
でも寝ないとよくならないよ。せめて大人しく転がってなきゃ
轟焦凍
うん、







弟はなにか言いたげに、口をもごもごさせている。





どうしたよ。







あなた
言いたいことあるなら言ってごらん?







そう言って顔を覗き込んでやれば、弟は私を見て口を開いた。







轟焦凍
...ここ、いてくれるか?
あなた
ん、ちゃんといるよ







だからそんな切ない表情しないの。





すり、と頬を撫でてやると、弟は気持ちよさそうに目を細める。







轟焦凍
あなた
あなた
なあに?
轟焦凍
手、握っててくれねぇか?
あなた
ん、いいよ







差し出された左手をきゅ、と握れば、弟は嬉しそうに微笑む。





空いている右手で額に張りついている前髪を退けてやると、弟はまた右手に頬ずりしてくる。







轟焦凍
あったけぇな、あなたは
あなた
まあ、元々体温高いからね
轟焦凍
すげぇ、安心する
あなた
そっか







猫のように擦り寄ってくる弟を見て、私は思わず笑う。







あなた
なんか猫みたいだよ、焦凍
轟焦凍
にゃあ
あなた
ふふっ







すりすりと頬ずりしながら、弟は甘えるように猫なで声を出す。





でれでれじゃんか。







轟焦凍
あなた
あなた
ん?
轟焦凍
好きって言ってくれ
あなた
それ、言わなくてもわかることなんじゃないの?
轟焦凍
...知ってる。けど、言ってほしい







弟はぼそりとそう言って、私の手を握る。





小さな子供がおねだりをするように。







あなた
...好きだよ
轟焦凍
あなた
これでいい?







結構言うの恥ずかしいんだからね、私は。





あんたは息をするように言ってるかもしれないけど、私は違うんだからね。







轟焦凍
あなた
あなた
なに?
轟焦凍
もういっかい
あなた
えー
轟焦凍
ダメか?
あなた
...もう







まあそう言われると思ってたけども。





私は小さくため息をついてから、口元を緩める。





なんだかんだいって結局甘やかしてる自分も、どうかしちゃってるよね。







あなた
好きだよ、焦凍
轟焦凍
ん、俺も好きだ。あなた







そう言ってふにゃりと笑う弟に、私もつられて笑う。





まったく、この甘えんぼはいつになったらなおるのかな。





...でもまあ、甘えてこなくなったらなったで、少し寂しくなるな。





そんなことを考えながら、私は弟が眠るまで、ずっと手を握っていた。

プリ小説オーディオドラマ