爆豪くんの声が耳に届き、はっ、とする。
泣きながら叫んだおかげか、爆豪くんは私の声で察したらしい。
焦ったような声で続けた。
そう言ってから、思わず咳き込んだ。
たぶん、大声を出したせいだろう。
言いながら、弟を見つめる。
額の出血が酷い。
早く止血しなきゃ。
泣いている場合じゃないのに。
先程とは違う温かな手が、私の髪に触れて優しく撫でていく。
その温かさに触れて安心したせいか、また涙がこぼれ落ちる。
もう十分、守ってくれたじゃない。
嫌になるほど守ろうとしてくれてたじゃないか。
自分を犠牲にしてまで、私を。
そう言うと、弟は弱々しく笑った。
ズキリと胸が痛む。
今すぐにでも抱きしめて温めてあげたいのに。
手が届く距離にいるのにも関わらず、瓦礫が邪魔でなにもできない。
それがもどかしくて仕方がなかった。
弟はそう言うと、私を見つめて口を開く。
いつも通りの言葉が、また安心をもたらしてくれる。
私は涙をこらえながら、弟に笑いかけた。
私の言葉に、弟は嬉しそうに笑った。
かと思ったら、スウッ、と表情が消えていく。
そして再び、弟の目が閉じられた。
声をかけるが、弟は目を開けない。
どくどくと額から溢れる血を見て、不安から再び涙が溢れ出す。
声を張り上げて、とにかく助けを求める。
今の私には、ただそれだけしかできなかった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!