予想外の弟の行動に、私は思わず声を上げる。
そんな私に構わず、弟はスポーツドリンクを含んだまま、私の唇に指を当てた。
まるで、口を開けろとでも言うように。
弟がやろうとしている行動に、私はさらに体温が上がる。
だって、それは恋人同士がやることでしょ?
姉弟でこんなこと、さすがに...。
弟は一旦、口内に含んでいたドリンクを飲み込む。
それから躊躇っている私に顔を近づけ、耳元で低く、甘い声で囁いてきた。
身体中に熱が集まる。
弟は私から顔を離すと、もう一度スポーツドリンクを口に含んだ。
えーい、こうなりゃヤケだ。
私は覚悟を決め、口を開ける。
そうすると、待ってましたと言わんばかりに、弟は唇を重ねてきた。
舌が入ってきたかと思えば、先程のドリンクを口内に流し込まれる。
入りきらなかったドリンクが溢れ、口の端から垂れた。
弟は唇を離すと、そう言って私の口の端を拭う。
ごくりと流し込まれたそれを飲み込めば、喉に潤いが戻ってきた。
それをする度に風邪がうつるリスクが高まるのを知らんのか、こいつは。
思わずジト目で弟を見つめる。
さっきのはもう懲り懲りだ。
これ以上やると私の身が持たないよ。
再び弟は布団に潜り込んできて、私を抱きしめる。
左の個性を使っているのか、かなり温かい。
その言葉、お父さんが聞いたらきっと喜ぶよ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。