ホークスはそう言いながら、お父さんにマイクを差し出す。
それを無言で、表情を変えずに受け取るお父さん。
大丈夫かな。
これ、結構喋りづらい状況だよね。
私を含め、みんなは固唾を呑んでテレビ画面を食い入るように見つめる。
そう言うと、お父さんは真っ直ぐ前を見つめた。
会場は静まり返ったままだ。
そんな中で、ホークスだけが拍手をしている。
彼の表情は相変わらず、なにを考えているのかわからなかった。
***
ヒーロービルボードチャートの中継が終わってからも、私はお父さんの言葉が頭から離れなかった。
あの言葉には、きっといろんな意味がある。
だから、どれが正解なのかはわからない。
ヒーローとして見ること、父親として見ること。
それだけじゃない、きっと他にも...。
突然呼ばれたことに驚いて声を上げると、弟は少し心配そうな表情でこちらを見つめる。
そう言うと、弟は微笑んで私の頭を撫でてくる。
ここ共有スペースだから勘弁して。
弟は私の肩にもたれかかってくると、そのままずるずると下がっていって私の膝に頭を乗せてくる。
いや、ソファーに座ってるから痛いとかはないんだけどさ。
甘えるなら2人の時に、って言ってあるんだよ。
子供か。
男子高校生がなに言ってんのよ。
寮の共有スペースで実の姉に甘える男子高校生なんて、聞いたことないよ。
違うそうじゃない。
No.1の息子がなにやってんのよ、ほんとにもう。
私は思わずため息をつく。
お父さん、この光景見たらどう思うんだろう。
「焦凍ォオオオ!!」って叫んでそうだよね。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。