第53話

No.53
21,878
2020/09/13 11:09
冬美
あなた、他に必要な物はある?
あなた
ううん、大丈夫だと思う。あとでもう一回確認してみるね








家に帰ってから、私と弟は林間学校に行くための準備をしていた。





当日の朝になってからじゃ、遅いものね。





なるべく早く済ませないと。







あなた
あ、








カバンを持ち上げた時、ころん、と何かが転げ落ちる。





コアラのぬいぐるみだ。





つぶらな瞳でこちらを見上げている。





てか、どこに飾ろうか。







あなた
...とりあえず机の上にしよ








ぬいぐるみを机の上に置く。





こちらに向けて手を広げ、まるで抱っこを求めている姿が、なんだか可愛らしかった。





思わず笑みが零れる。







轟焦凍
あなた、入っていいか?
あなた
いいよ








ぽすぽす、と襖が軽くノックされる。





襖の向こうに映る影を見て、私は答えた。







轟焦凍
準備、終わったか?
あなた
もうすぐ終わるとこだよ。あんたは?
轟焦凍
もう終わった。暇だったから来た
あなた
暇だった、って...








ドヤ顔すんな。







轟焦凍
ぬいぐるみ、早速飾ってんだな
あなた
まあね。あんたは飾ってないの?
轟焦凍
俺も飾った。机の上に








同じ場所じゃん。





てか、弟がぬいぐるみを机に飾る姿って、なんかシュールだな。







轟焦凍
写真も飾ってあるぞ。ついでにスマホの待ち受けにしようかと思ってんだが...
あなた
絶ッ対に止めて








あんな黒歴史に近いもの、みんなの前にさらす気か。





冗談じゃないよホントに。







轟焦凍
なあ
あなた
なに?








ようやく荷造りが終えたところで、弟が声をかけてくる。





なんだよいったい。







轟焦凍
少し特訓してぇんだけど、あなたも付き合ってくれねえか?
あなた
え、私が?
轟焦凍
おう








弟と特訓なんて、できっこないよ。





あんたに勝る力もないし、かえって邪魔になる自信しかないんだけど。







あなた
足でまといになると思うよ。まず、特訓相手ならお父さんの方がいいんじゃない?
轟焦凍
クソ親父と特訓なんてごめんだ。俺はあなたと特訓してえ
あなた
...邪魔になると思うよ
轟焦凍
ならねえ。そんなこと思ってんなら、誘わねえだろ
あなた
まあそうだけどさ








やっぱり少し抵抗があるんだよね。





弟と特訓するなんて、いつぶりかどうかもわからないのだから。





私も特訓はするけど、いつも一人だったから。







あなた
...わかったよ、後悔しても知らないからね
轟焦凍
するわけねえだろ








渋々承諾すると、弟は嬉しそうに微笑んだ。

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