家に帰ってから、私と弟は林間学校に行くための準備をしていた。
当日の朝になってからじゃ、遅いものね。
なるべく早く済ませないと。
カバンを持ち上げた時、ころん、と何かが転げ落ちる。
コアラのぬいぐるみだ。
つぶらな瞳でこちらを見上げている。
てか、どこに飾ろうか。
ぬいぐるみを机の上に置く。
こちらに向けて手を広げ、まるで抱っこを求めている姿が、なんだか可愛らしかった。
思わず笑みが零れる。
ぽすぽす、と襖が軽くノックされる。
襖の向こうに映る影を見て、私は答えた。
ドヤ顔すんな。
同じ場所じゃん。
てか、弟がぬいぐるみを机に飾る姿って、なんかシュールだな。
あんな黒歴史に近いもの、みんなの前にさらす気か。
冗談じゃないよホントに。
ようやく荷造りが終えたところで、弟が声をかけてくる。
なんだよいったい。
弟と特訓なんて、できっこないよ。
あんたに勝る力もないし、かえって邪魔になる自信しかないんだけど。
やっぱり少し抵抗があるんだよね。
弟と特訓するなんて、いつぶりかどうかもわからないのだから。
私も特訓はするけど、いつも一人だったから。
渋々承諾すると、弟は嬉しそうに微笑んだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。