夕食を食べるために共有スペースに行けば、わっ、と女子たちが群がってくる。
キスされた、とは言えない...。
てかキスって、触れるだけじゃないの?
舌も入れるもんなの?
わからん。
自炊しようと、冷蔵庫から持ってきた野菜をまな板の上に乗せる。
他のみんなはテレビを見たり、トランプをしたり、自由に過ごしている。
...そういえば、弟はどこに?
声が聞こえ、目線を向ける。
見れば、弟が爆豪くんに歩み寄っているところだった。
弟と爆豪くんは、共有スペースから離れてこっちに向かってくる。
え、なんでこっちくるの。
そう会話をしながら、二人はスタスタと私の横を歩き去っていく。
その背中を見ながら、私は思う。
あいつ爆破されなきゃいいけど、と。
たぶん話っていうのは、爆豪くんに頼むつもりなんだろう。
どんな妄想してんだよ。
心の中で突っ込みながら、私は野菜を包丁で切る。
てかあの二人、どこまで行ったんだろ。
声をかけられ、野菜を切る手を止める。
振り向けば、すぐ横に緑谷くんが立っていた。
どうしたんだろ。
他人をいつでも気遣うところは、緑谷くんのいいところだよね。
私も見習わなきゃ。
緑谷くんは不思議そうに首を傾げた。
まあ、そりゃそうだよね。
なんて思った時だった。
爆発音が聞こえたのは。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。