第175話

No.175
15,238
2021/07/06 11:32
夕食を食べるために共有スペースに行けば、わっ、と女子たちが群がってくる。







麗日お茶子
あなたちゃん、大丈夫やった?
あなた
え、なにが?
葉隠透
轟くんのことだよ。どうなったの?
あなた
あー、うん。...なんとかなるよ








キスされた、とは言えない...。





てかキスって、触れるだけじゃないの?





舌も入れるもんなの?





わからん。







あなた
まあたぶん大丈夫、うん
蛙吹梅雨
ならいいのだけれど...








自炊しようと、冷蔵庫から持ってきた野菜をまな板の上に乗せる。





他のみんなはテレビを見たり、トランプをしたり、自由に過ごしている。





...そういえば、弟はどこに?







轟焦凍
爆豪
爆豪勝己
あ?








声が聞こえ、目線を向ける。





見れば、弟が爆豪くんに歩み寄っているところだった。







轟焦凍
ちょっと来てくれねえか?
爆豪勝己
んだよ。ここじゃだめなんか
轟焦凍
ああ、だめだ
爆豪勝己
...チッ。おら、行くぞ








弟と爆豪くんは、共有スペースから離れてこっちに向かってくる。





え、なんでこっちくるの。







爆豪勝己
おい半分野郎。どこ行く気だ
轟焦凍
なるべくみんなから離れた場所だ
爆豪勝己
んでだよ。そんなに大事なんかよ
轟焦凍
ああ。大事だ








そう会話をしながら、二人はスタスタと私の横を歩き去っていく。





その背中を見ながら、私は思う。





あいつ爆破されなきゃいいけど、と。





たぶん話っていうのは、爆豪くんに頼むつもりなんだろう。







上鳴電気
あれ、爆豪は?
切島鋭児郎
なんか轟に呼ばれてったぞ
上鳴電気
そうか〜。かっちゃんついに轟から愛の告白を受けるのか








どんな妄想してんだよ。





心の中で突っ込みながら、私は野菜を包丁で切る。





てかあの二人、どこまで行ったんだろ。







緑谷出久
轟さん








声をかけられ、野菜を切る手を止める。





振り向けば、すぐ横に緑谷くんが立っていた。





どうしたんだろ。







あなた
緑谷くん、なに?
緑谷出久
あのさ。轟くん、大丈夫だった?
あなた
ああ。それなら平気、大丈夫だよ
緑谷出久
そっか








他人をいつでも気遣うところは、緑谷くんのいいところだよね。





私も見習わなきゃ。







緑谷出久
あ、そうだ。かっちゃんが見当たらないんだけど、どこに行ったか知らない?
あなた
爆豪くんなら、焦凍に呼ばれてどっか行っちゃったよ
緑谷出久
轟くんに?
あなた
うん








緑谷くんは不思議そうに首を傾げた。





まあ、そりゃそうだよね。





なんて思った時だった。





爆発音が聞こえたのは。

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