いやさっき言ったじゃんか。
まず付き合ってもない人とキスなんてしない、って。
まあ、恋人じゃなくて姉弟なんだけどさ。
弟はもう隠す気はないらしくて、思いっきり表情を顰めている。
てか、ほんとにしつこいな。
私は思わず声を上げた。
いやありえないでしょ。
彼氏ちょうだい、って、普通は言えるものじゃないよね?
頭おかしいんじゃないのかな、純粋に思うけど。
とうとう我慢の限界だったらしく、弟が女子生徒への怒りを露わにする。
でも女子生徒は懲りないようで、ずっと弟の腕にしがみついて離れない。
あーもう、焦れったい。
弟が本気で困ってることがわかんないのかな。
私は痺れを切らし、弟の方に近づく。
そしてそのまま、弟の腕にしがみついて自分の方へと引き寄せた。
我に返る。
苛立ちで口走ってしまった言葉に気づき、私は慌てて口を塞ぐ。
が、ばっちり弟には聞こえていたらしくて...。
大きく目を見開き、私を見つめていた。
と、弟は突然女子生徒の腕を乱暴に振り払う。
驚いている女子生徒には目も向けず、そのまま私を抱きしめた。
離れろや。
さっきの言葉といい今の行動といい、さすがに恥ずかしすぎる。
柄じゃないんだからさぁ。
以前言っていたことと同じようなことを言うと、女子生徒は私と弟を引きはがそうと手を伸ばしてくる。
が、
弟が低い声で呟き、女子生徒の手を乱暴に払い除けた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。