第28話

No.28
27,962
2020/09/01 13:53
みんなと別れてから、私と弟は駅に向かって歩いていた。





あーあ、見たかったのになあ。







あなた
残念だったね、決着つけれなくて
轟焦凍
またやればいいだろ








弟はそう言うけど、本心なのかどうかはわからない。





だってポーカーフェイスのまんまだし。







轟焦凍
あなたは、
あなた
ん?
轟焦凍
楽しかったか?
あなた
うん
轟焦凍
そうか








さっきの話のせいか、弟の元気がないように見える。





...よし、







あなた
ねぇ
轟焦凍
あなた
なんかお腹空いちゃったから、クレープでも食べてかない?








なんか美味しいものでも食べたら、多少は忘れられるかもしれない。





単純にそう思った。







轟焦凍
電車、どうするんだ?
あなた
次のやつに乗ればいいよ。ほら、行こ








少し戸惑っている様子の弟の手を掴んで、私はさっさと歩き始める。





弟はなんの抵抗もなく、私についてくる。







轟焦凍
なあ、あなた
あなた
なに?
轟焦凍
くれーぷ、ってなんだ?
あなた
あー...食べたことないのね








なんとなくそんな予感はしてたけども。





やっぱり食べたことなかったんだ。





じゃあ尚更だ。







あなた
まあ食べてみればわかるよ。ここら辺にね、クレープ屋さんがあるんだ。たまにみんなと来るの








少しでもいいから、弟にはいろんな景色を知ってほしい。





家に閉じこもって鍛錬ばかりの日々もいいけど、少しは出かけないと。





...まともに10年間、一緒に過ごすこともなかったものね。





食事とお風呂、睡眠以外は、弟と顔を合わせることなんてできなかったから。





だけど、弟は...。







轟焦凍
あなた?








急に足を止めた私の顔を、弟が不思議そうに覗き込んでくる。





おっといけない。





考えごとをすると、すぐに立ち止まってしまうのが私の癖なんだ。





直さなきゃね。







あなた
ううん、なんでもない。行こ
轟焦凍
おう








なんで弟は、私を目の敵にしなかったんだろう。





ろくに話せてもいなくて、嫌われていたのかと思っていたのに。





昔と同じように接してくれるなんて、思っていなかった。







あなた
あ、ほらここだよ
轟焦凍
なんかすげえな








今思ったら、弟は店内に入るのは平気なんだろうか。





普通なら恥ずかしがるはずだけど、







轟焦凍
入らねえのか?
あなた
いや、入るよ








やっぱり気にしないんだね。





そりゃそっか、こいつだもん。

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