共有スペースにて。
私は弟の後ろに隠れながら、ぽてぽてと歩いていく。
ドッキリ仕掛けるとかそんなんじゃない、ってわかってるんだけど、なんとなく後ろに隠れたかったんだよね。
緑谷くんが私を見て、大声を上げる。
彼の大声を聞いたみんなが、なんだなんだとこちらに集まってくる。
それから緑谷くんと同じように、全員が驚いたように声を上げた。
みんなは口々にそんなことを言いながら、私の頭を撫でてくる。
完全に子供扱いされてるんだけど...。
原因は私が知りたいくらい。
だって、昨日の夜はなんともなかったんだもの。
急すぎるよ。
そうなんだよね。
いったいどこでかけられたんだろ。
お茶子ちゃんの言葉を聞いて、私は頷いた。
見た目だけが昔に戻って、でも記憶はそのままなんだ。
まあ、記憶まで過去に戻られたらとんでもないよ。
昔の自分なんて、見られたくないし...。
そう言ってから、気がついた。
ヤオモモちゃん意外の目が、私に向いていることに。
待て、なに言ってんだ私。
自分が口にした言葉に恥ずかしくなり、ぶわあっ、と顔を赤くする。
そんな時だった。
弟が、私を胸の中に抱きかかえたのは。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。