第634話

No.628
6,795
2021/08/20 08:41
冬美
じゃあ、気をつけてね







玄関にて。





学校へと戻る私と弟を、お姉ちゃんが見送りにきてくれる。





...またしばらく会えなくなっちゃうな。







あなた
お姉ちゃんも、身体大事にね
冬美
ありがとう、あなた







次に会うのはお正月かな。





その前には仮免再試験だし、頑張らないと。







冬美
焦凍も、元気でね
轟焦凍
ああ。姉さんこそ







お互いに会話をしたあとで、父が言った。







エンデヴァー
そろそろ行くぞ。学校まで送るから、車に乗ってくれ
轟焦凍
ああ
あなた
わかったよ







父が車の方へと向かっていくのを見てから、私はもう一度お姉ちゃんの方に向き直った。







あなた
じゃあお姉ちゃん、またお正月にね
冬美
うん。待ってるよ
轟焦凍
じゃあ、行ってくる
冬美
行ってらっしゃい、2人とも。仮免も頑張ってね







そう言われて、私たちは頷く。





家の前には、父のものであろう車が止まっていた。





後部座席に弟と乗り、バタン、とドアを閉める。





とたん、弟が少し顔を顰めた。







轟焦凍
加齢臭...
あなた
...
轟焦凍
痛っ







ぼそりと呟いた弟の頭を無言で引っぱたくと、弟は小さく声を上げた。







エンデヴァー
忘れ物はないか?
あなた
ないよ、大丈夫







そういうなり、車を走らせた。





沈黙がながれる。





...気まずい。







エンデヴァー
あなた
あなた
!?な、なに?







突然声をかけられて、驚きのあまり声が裏返る。





だってお父さん、口を開けば焦凍焦凍ばかりだもの。





なんで急に...。







エンデヴァー
学校に着いてからでいい。頼みがある
あなた
頼み?
エンデヴァー
そうだ。俺にとっては重大な頼みだ







私の脳内はハテナマークでいっぱいになる。





重大な頼み...なんだろう。





てか、その重大なものを私に頼んでいいのかな。





弟にでも頼めばいいのに。







轟焦凍
てめぇ、あなたに変なこと頼んだら承知しねぇからな
あなた
こら、焦凍
エンデヴァー
安心しろ焦凍。あなたに迷惑がかかるようなことは頼まない
轟焦凍
ならいい







威嚇する弟を宥めていると、父が自信満々といったように口を開く。





弟はまだ疑わしい目を向けていたけれど、渋々頷く。





ほんとになんだろ、頼みって...。









***









あなた
...
エンデヴァー
...そんな目で俺を見るな、あなたよ







車から降りて、父が頼みたいと言っていた内容を聞いて、私は思わず真顔になる。





なるほど、納得だ。





どうして弟じゃなくて私に頼んだのか、やっと納得できたよ。







エンデヴァー
頼むあなた。俺に焦凍のアカウントを教えてくれないか
あなた
...ハイドーゾ







こういうわけだ。





携帯を借りてぱぱっ、と弟のアカウントを登録し、父に返す。





父は自分の携帯に弟のアカウントが登録されているのを見ると、満足そうに笑った。







エンデヴァー
すまないなあなた。ありがとう
あなた
いーえ。焦凍のアカウント登録できてよかったね
エンデヴァー
ああ。これで任務も頑張れる







単純かよ。







あなた
じゃあ、私は学校あるからもう行くね
エンデヴァー
ああ。頑張ってこい
あなた
ありがと







父の言葉を聞いて走り出しながら、私は考えた。





あの親バカっぷりは、たぶん治せないだろうなと。

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