第366話

No.364
8,719
2021/02/08 17:03
轟焦凍
あなた、俺だ
あなた
オレオレ詐欺ですか?
轟焦凍
違ぇ。轟焦凍だ
あなた
わかってるよ、入って







焦ったように言い直す弟に、私は思わず笑う。





弟を部屋に招き入れ、適当に座らせた。





レイが弟の方にぽてぽてと寄っていき、甘えたように喉を鳴らす。







あなた
焦凍にもだいぶ慣れてきたみたいね
轟焦凍
そうらしいな







すり寄ってくるレイを見て、弟は口元を緩める。







轟焦凍
ご飯やったのか?
あなた
うん。もうあげたよ







さっきまでめっちゃ食いついてたからね。





レイは結構、食いしん坊なのかも。







あなた
じゃ、絆創膏貼りなおすからね
轟焦凍
ん、頼む








救急箱を持ってきて、弟の前に座る。





絆創膏を取り出して、包装紙を破く。





弟はじっ、として目を瞑っており、大人しくしている。





正直助かるわ。







あなた
そのままじっ、としててね。一旦消毒してから貼るから
轟焦凍
わかった







消毒液を染み込ませたティッシュで頬っぺを軽く吹いてやる。





そうすると染みたのか、弟は僅かに顔を顰めた。







あなた
もうちょっとだから、我慢してて
轟焦凍
...うん







ぎゅっ、と目を瞑る弟の頬にティッシュを当て、消毒する。





消毒を終えてから、今度は取れないようにと、私は弟の頬に絆創膏を貼った。







あなた
ん、終わったよ







私の言葉を聞いて、弟は瞑っていた目を開ける。





それから確認するように、自分の頬をぺたぺたと触った。







あなた
簡単には剥がれないようにしたんだけど、もし剥がれたらまたおいで。もっかい貼りなおすからさ
轟焦凍
おぉ、ありがとな







救急箱を片付けて、さっさと明日の準備をすませる。





その間、弟は特に動かずにちょこんと座布団の上に座っていた。







あなた
早く戻って寝なよ。明日学校でしょ?
轟焦凍
...
あなた
焦凍?







黙りこくっている弟に目を向ける。





弟は私と目が合うと、真剣な表情で口を開いた。







轟焦凍
あなた
あなた
なに?
轟焦凍
今日一緒に寝たい
あなた
部屋戻りなさい
轟焦凍
...







真剣な表情してなに言ってんだあんたは。





私が即答すると、弟はしゅん、と項垂れた。







あなた
私とばっかり寝てないで、ちゃんと自分の部屋で体休めないとダメだよ







だいたい、一緒に寝ててもひとつの布団じゃ狭いから体の負担になるだけじゃん。





でも一緒に寝る時は、弟が私を寝やすいようにしてくれるんだよね。





そこはすごく感謝してるし、ぜんぜん問題ない。





だけど、弟に負担がかかっているのはわかってるんだ。





だから、ひとりで自分の部屋で寝た方がきっと楽なはずだと思ってる。

プリ小説オーディオドラマ