焦ったように言い直す弟に、私は思わず笑う。
弟を部屋に招き入れ、適当に座らせた。
レイが弟の方にぽてぽてと寄っていき、甘えたように喉を鳴らす。
すり寄ってくるレイを見て、弟は口元を緩める。
さっきまでめっちゃ食いついてたからね。
レイは結構、食いしん坊なのかも。
救急箱を持ってきて、弟の前に座る。
絆創膏を取り出して、包装紙を破く。
弟はじっ、として目を瞑っており、大人しくしている。
正直助かるわ。
消毒液を染み込ませたティッシュで頬っぺを軽く吹いてやる。
そうすると染みたのか、弟は僅かに顔を顰めた。
ぎゅっ、と目を瞑る弟の頬にティッシュを当て、消毒する。
消毒を終えてから、今度は取れないようにと、私は弟の頬に絆創膏を貼った。
私の言葉を聞いて、弟は瞑っていた目を開ける。
それから確認するように、自分の頬をぺたぺたと触った。
救急箱を片付けて、さっさと明日の準備をすませる。
その間、弟は特に動かずにちょこんと座布団の上に座っていた。
黙りこくっている弟に目を向ける。
弟は私と目が合うと、真剣な表情で口を開いた。
真剣な表情してなに言ってんだあんたは。
私が即答すると、弟はしゅん、と項垂れた。
だいたい、一緒に寝ててもひとつの布団じゃ狭いから体の負担になるだけじゃん。
でも一緒に寝る時は、弟が私を寝やすいようにしてくれるんだよね。
そこはすごく感謝してるし、ぜんぜん問題ない。
だけど、弟に負担がかかっているのはわかってるんだ。
だから、ひとりで自分の部屋で寝た方がきっと楽なはずだと思ってる。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。