ヴィランの言葉に、私は思わず反論した。
そう言えば、ヴィランはパチパチと手を叩き始める。
彼の言葉と行動は、私たちを嘲笑っているようにしか思えなかった。
弟がすかさず氷結を出し、攻撃を仕掛ける。
が、ヴィランはそれを難なく躱し、あたかも何事もなかったかのように別の木に移った。
常闇くんの姿が見当たらないことに気がついた障子くんが、私たちに言った。
三人が気がつかなかったってことは、音もなく二人を連れ去ったってことになる。
この人の個性、いったいなんなんだ。
じゃあ今持っているビー玉は、常闇くんってことになるのか。
ヴィランはもう一つビー玉を取り出し、先程と同じように弄ぶ。
怒りのあまり、興奮状態の緑谷くん。
そんな緑谷くんを、障子くんがなだめる。
背負っていた男子を、弟はお茶子ちゃんに預ける。
そのあと弟は、最大火力で氷結をヴィランに向かって発動させた。
が、ヴィランはそれを先程のように難なく躱し、空中に浮く。
逃げ足と欺くことだけが取り柄だなんて、なんて野郎だ。
ただの卑怯者にすぎない。
回収地点へと向かうヴィランを、私たちは全速力で追いかける。
だけど、
木から木へと移りながら素早く移動するヴィランには、私たちの足ではとても追いつけなかった。
どうしよう、このままじゃ爆豪くんたちが...!
体中がぼろぼろの状態でも、助けなきゃいけないという思いが、彼の中にはある。
その気持ちが、私には痛いほど伝わってきた。
なにをするつもりなの?
緑谷くんの言葉に、みんなが不思議そうな表情をする。
確かにいい提案だとは思うけど。
私は思わず口を挟んだ。
緑谷くんの怪我の状態は、さっきも言ったけど酷い。
気を失っていてもおかしくないくらいだ。
いつもとは違う、緑谷くんの少しドスの効いた声。
本気、なんだ。
友を助けに行くためなら、自分がどんな状態でも友を優先する。
そんな人だったよね、緑谷くんは。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。