第280話

No.280
10,589
2020/12/24 04:03
轟焦凍
結構熱高ぇんだな
あなた
うん、
轟焦凍
何度ぐらいだった?
あなた
38℃以上
轟焦凍
高ぇな








つらくないか?と右手を私の額に当てて言う弟。





私は無言で頷く。





弟が冷やしてくれているおかげで、さっきよりは楽になったと思う。





身体の怠さは変わらないけどね。







轟焦凍
なんかしてほしいこととかあるか?
あなた
...特にない
轟焦凍
ならなんか食べるか?
あなた
...食べる








そう答えたのはいいものの、部屋の冷蔵庫にはなにもない。





共有スペースの冷蔵庫にはなにかしらあると思うけど、なにしろ弟は料理が壊滅的にできないのだ。





食材が死んでしまう。







轟焦凍
たぶんなんもねぇだろ。コンビニとかで、なんか買ってくるな
あなた
あ...








再び立ち上がろうとした弟の服を、私は思わず掴んだ。





弟が驚いたように振り返る。







轟焦凍
あなた?








いけない。





私はすぐに手を離して、弟に背を向けるようにして寝返りを打った。







あなた
...なんでもない
轟焦凍
そうか?なら行ってくるな
あなた
うん








今度こそ弟が部屋を出ていってしまうのがわかると、私は体勢を元に戻す。





風邪を引くと人肌が恋しくなるとか、弟には絶対言えない。





前は相手がお姉ちゃんだからこそ言えたことなんだもの。





姉弟とはいえ、異性にそんなこと言えるわけない。





...恋人だったりしたら話はまた別なんだろうけどね。







あなた
...








普段は誰もいないのに。





そんなことは、慣れているはずなのに。





寂しくてたまらない。





自分の悪い癖だ。





風邪を引くと、小さな子供のように戻ってしまう。





誰かに無性に甘えたくなってしまうのだ。





こういう時は、寝ることに限るよ。





そう思い、私は目を閉じる。





けど、眠れない。





眠らなきゃ治らないというのに。





寂しさが勝ってしまう。







あなた
...










"早く戻ってきて"









スマホのトークアプリを開き、弟に連絡を入れようとそう打とうとする。





が、送信することなく、消去してスマホを閉じる。





こういうとき素直になれないんだよね、私。





ダメだなぁ。

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