着替えを終えてから恐る恐る出ていくと、みんながわっ、とこちらに集まってくる。
恥ずかしいんだが。
なんか照れるなぁ。
こういうこと言われ慣れてないから恥ずかしい気持ちもあるけど、今は嬉しい気持ちの方が強いや。
その声に、みんなが振り向く。
見れば、ドレスに身を包んだ一佳ちゃんが立っていた。
どこに納得する要素があるんだ一佳ちゃん。
え、なんでわかるの。
女子たちはそれを聞くと、目を輝かせた。
きゃっきゃといつの間にか話は盛り上がり、弟を呼んでいた。
女子たちがはしゃぐ中、私はおろおろ。
弟は突然呼ばれたことに驚いているのか、きょとんとした表情でこちらに歩いてきた。
三奈ちゃんは私の方をちらりと見てから、再度口を開いた。
急になにを...。
ちらりと弟を見ると、弟も私を見つめていた。
え、なに。
弟はじぃいっ、と私を見つめながら、口を開く。
まて、ほんとにする気?
思わずかたまると、弟は不思議そうな表情をする。
が、私が動かないのを見て、弟自らがこちらに歩いてきた。
そして、
そう言いながら、軽々と私を抱き上げる。
A組のみんなは歓声(一部怒声)を上げ、一佳ちゃんはなにが起こっているのかわからないというような表情をしていた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!