どうすれば、父に納得してもらえるのか。
もっと実力を上げることができるのか。
何度も考えた。
だけど、答えは見つからなかった。
ひたすら特訓し続け、実力を上げるために努力した。
でもだめだった。
私は、父に納得してもらえるような実力を、身につけることができなかった。
頭上から瓦礫が落ちてきて、咄嗟に頭を庇う。
が、見覚えのある氷が、私の頭上に現れた。
見れば、弟が少し焦ったような表情で、私に駆け寄ってきていた。
また、助けられちゃったよ。
嘘ではない。
だけど、半分は嘘。
はや。
さすが秀才。
爆豪くんと並んで2トップと言われるだけのことはあるね。
弟はそう言って、私と目線を合わせる。
膨冷熱波...。
あの大技か。
弟との連携技か...。
正直少し怖いけれど、なにごとも試しだ。
連携技をするには絶対に必要なこと。
それは、お互いに波長やタイミングをバッチリ合わせることだ。
私は炎、弟は氷結。
どちらが少しでもズレてしまえば、連携技は成立しない。
いかにお互いを信頼し合っているか、これが一番大切だ。
背中合わせになって私は左手を、弟は右手を巨大な岩に向かって翳す。
私からは熱気が立ち込め、弟からは物を歪に氷出す音が聞こえる。
もちろん、この技をやるのは初めて。
でも、初めてだからといって上手くいかないわけじゃない。
お互いのコンビネーションが、大切なのだから。
感覚的に放って上手くいくとは到底思えないし、かといってどちらかが好き勝手にやれば周囲は氷と炎の海になる。
だから、今回は特別に合わせてあげる。
氷の勢いに合わせて、炎の威力と軌道を操作する。
二つの個性が見事に交じり合って生まれた凄まじい衝撃波が、岩に直撃。
爆音が轟き、地面が軽く揺れた。
なんとか上手くいったようだ。
地面が揺れた拍子に、思わず尻もちをつく。
弟の手を借りて立ち上がり、土煙が上がったところを見つめる。
岩は粉々に砕け、残っているのは小さな石ころばかり。
あんなに巨大だった岩を、たった一瞬で破壊するなんて...。
私は思わず、自分の左手を見つめた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。