第137話

No.137
15,821
2020/10/09 13:50
どうすれば、父に納得してもらえるのか。





もっと実力を上げることができるのか。





何度も考えた。





だけど、答えは見つからなかった。





ひたすら特訓し続け、実力を上げるために努力した。





でもだめだった。





私は、父に納得してもらえるような実力を、身につけることができなかった。







あなた
!きゃっ、!








頭上から瓦礫が落ちてきて、咄嗟に頭を庇う。





が、見覚えのある氷が、私の頭上に現れた。







轟焦凍
あなた、大丈夫か!?
あなた
う、うん...。大丈夫、ありがと








見れば、弟が少し焦ったような表情で、私に駆け寄ってきていた。





また、助けられちゃったよ。







轟焦凍
浮かない顔してっけど、なにかあったのか?
あなた
ううん。必殺技が思いつかなくて悩んでるだけだから、大丈夫だよ








嘘ではない。





だけど、半分は嘘。







あなた
あんたはできたの?必殺技
轟焦凍
おう








はや。





さすが秀才。





爆豪くんと並んで2トップと言われるだけのことはあるね。







轟焦凍
でもそのひとつは、お前との連携技にもできるんだ
あなた
連携技?私との?
轟焦凍
ああ








弟はそう言って、私と目線を合わせる。







轟焦凍
体育祭で使ったやつがある。お前も見ただろ?
あなた
...緑谷くんとの戦いで使ったやつのこと?
轟焦凍
ああ。"膨冷熱波"。これがその技の名前だ








膨冷熱波...。





あの大技か。







轟焦凍
なあ
あなた
なに?
轟焦凍
一緒にやってみねぇか?
あなた
轟焦凍
膨冷熱波。俺とやってくれねぇか?








弟との連携技か...。





正直少し怖いけれど、なにごとも試しだ。







あなた
わかった。やろう
轟焦凍
おう、頼む








連携技をするには絶対に必要なこと。





それは、お互いに波長やタイミングをバッチリ合わせることだ。





私は炎、弟は氷結。





どちらが少しでもズレてしまえば、連携技は成立しない。





いかにお互いを信頼し合っているか、これが一番大切だ。







轟焦凍
いくぞ
あなた
うん、!








背中合わせになって私は左手を、弟は右手を巨大な岩に向かって翳す。





私からは熱気が立ち込め、弟からは物を歪に氷出す音が聞こえる。





もちろん、この技をやるのは初めて。





でも、初めてだからといって上手くいかないわけじゃない。





お互いのコンビネーションが、大切なのだから。





感覚的に放って上手くいくとは到底思えないし、かといってどちらかが好き勝手にやれば周囲は氷と炎の海になる。







あなた
私の炎に、かき消されないようにしなよ
轟焦凍
!...おう








だから、今回は特別に合わせてあげる。







轟焦凍
___"膨冷熱波"
あなた
___"膨冷熱波"








氷の勢いに合わせて、炎の威力と軌道を操作する。





二つの個性が見事に交じり合って生まれた凄まじい衝撃波が、岩に直撃。





爆音が轟き、地面が軽く揺れた。





なんとか上手くいったようだ。







あなた
っ、はあ...
轟焦凍
大丈夫か?
あなた
...うん








地面が揺れた拍子に、思わず尻もちをつく。





弟の手を借りて立ち上がり、土煙が上がったところを見つめる。





岩は粉々に砕け、残っているのは小さな石ころばかり。





あんなに巨大だった岩を、たった一瞬で破壊するなんて...。





私は思わず、自分の左手を見つめた。

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