あの後。
なんとかハンターから逃げ切ることができた私は、倒壊ゾーンにある建物の中に身を潜めていた。
なんでわざわざバスでUSJまで来て逃走中なんか...。
まあいいや、とにかく逃げ切ることだけを考えよう。
でもさっき追いかけられたせいで、弟とはぐれてしまった。
今私がいる倒壊ゾーンには人の姿はパッと見て見当たらなかったんだけど。
みんな捕まってないかな。
大丈夫かな。
そう思いながら身を潜める、と...。
足音が聞こえ、私は思わず立ち上がった。
足音はだんだん大きくなっていき、こちらに向かってきているのがわかる。
やばい、こっちくる。
逃げるとしたら、まずは壁に穴を開けよう。
この建物は脆いから、すぐに穴が開くはず。
相手が炎に気を取られている隙に、私はその穴から脱出する。
よし、これでいこう。
考えがまとまったところで、私は壁に向かって手を翳した。
相手が来た瞬間に、炎を放つためだ。
そしてもう片方の手を、相手が来るであろう方向に向ける。
相手に当てはしないけど、足場を少し炎で囲んで怯ませるためだ。
足音がだんだん、こちらに近づいてくる。
あと5秒...4、3、2、1...。
炎を放とうとした直前に声が上がって、私は声の主に目を向ける。
そこにいたのは切島くんで、ハンターではなかった。
緊張が解けて、私は安堵の息をつく。
切島くんはこちらに歩いてくると、私の隣に座り込んだ。
つられて私も腰を下ろす。
2人で逃げてたら捕まるものね。
上鳴くん、捕まっちゃったんだ。
まあ、爆豪くんに目をつけられたら終わりかも。
見つからないように気をつけなきゃ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。