麦わら帽子を目深に被っている弟が、訝しげに私を見つめる。
私が考えた作戦は、変装。
とは言っても、弟には麦わら帽子を目深に被ってもらうだけで十分なんだけどね。
あとは、
そう言って私が渡したのは、サングラス。
弟は少し眉を顰めながらも、サングラスを受け取って身につける。
お、意外と似合ってんじゃん。
ちなみに私は伊達メガネ。
弟は私が被っていた麦わら帽子と、さっき百均で買ってきた安物のサングラス。
私はともかく、弟は特徴的なところが多いから、とにかく目立つ。
暑いだろうけど我慢してくれよ。
私の髪色は、お母さんと同じ白。
個性は炎を使うのに、なんで白なんだろ。
てっきり、お母さんの個性を受け継ぐと思ってたんだけどね。
それからしばらく人混みの中を歩いていたけど、特に問題はなかった。
声をかけられることもないし、作戦成功かな。
二人でブラブラとショッピングモールを歩く。
いろとりどりのお店がたくさん並んでいて、すぐに道に迷いそう。
と、
店内は綺麗に飾り付けられていて、とてもお洒落。
かなり女の子向けのお店だけど、弟は大丈夫だろうか。
ちらりと弟を見ると、興味深そうに商品を眺めていた。
こいつは天然だから、あんまりこういうのは気にしなさそうだな。
ドヤ顔で弟が持ってきたのは、色がド派手なシュシュ。
なに持ってきてんだあんたは。
そんなの付けれんわ。
弟はぽつりと呟くと、店内の奥へと姿を消した。
弟のセンスって、どうなってるんだろ。
また変なの持ってこなきゃいいけど。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!