リュウはあるバーの前でバイクを停めた。
日没前のバーは、息を潜めているようにひっそりと
佇んでいる。
"CLOSE"と吊るされた扉を勢いよく押すと、
カウンターに見慣れた顔の銀髪の男が立っていた。
ヒロは、拭いていたグラスをそっと置いて顔を上げた。
手渡されたタブレットを見る。
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行方不明者情報
・服装、持ち物
·上下同じ色のスウェット
·黒色のコート
·小さめのボストンバッグ
・特徴
·髪は長め
·背はそれほど高くなく、かなり痩せ型
·15歳
·
·
·
スクロールすると写真が出てきた。
それは紛れもなく、今日1日行動を共にしている女の子だ。
そして、リュウは最後の1文に目を疑った。
"彼女は未確認生物研究所の特別研究員ですので、見つけ次第本研究所までご連絡ください。
【電話番号:03-xxx-xxxx】"
リュウは今日の朝のことを思い出す。
コーヒーでも買おうと公園に寄った。
自販機にお金を入れようとした時、近くに女の子が立っているのが見えた。
女の子は痩せていたからかどこか儚げで、
思わず声を掛けた。
リュウはホッと胸を撫で下ろす。
礼をして扉の方に向かうと、ヒロがリュウの肩をガシッと掴んで耳元に口を寄せる。
慌ててヒロの体を突き放す。
リュウを見るヒロの顔は、頬が緩みまくっていた。
そんな先輩は後回しにして、リュウはCTを店内に連れて来た。
彼女は困った顔をしてリュウを見た。
目が合うとリュウは頷いた。
いつの間にかCTの目に涙が溜まっていた。
金と銀の頭がぼやけて見える。
ヒロはそう言って微笑むと、ポケットの中から鍵を取り出した。
それを『はい』と差し出す。
ヒロはCTの背中を押し、CTは頷いて階段を上っていった。
肩をポンポンと叩いた先輩の頬を涙が伝っていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。