第3話

やりたい事②
23
2019/01/31 12:55
正午のチャイムが鳴り、リュウは時計を見た。


2人がバドミントンを始めてから1時間が経とうとしていた。
リュウ
しー、そろそろ昼飯にしようぜ
CT
………しーって何
リュウ
しーてぃーって長ぇから。しー
CTは、額に大粒の汗を光らせながら
少しだけ微笑んだ。

リュウ
なんか食べたいものは?
CT
あっ!じゃあついでにやりたい事も叶えていい?
リュウ
……言ってみ







数分後

2人は回転寿司店に来ていた。

リュウは、店内のあちこちに目移りしてフラフラと
歩いている彼女の手を何とか引っ張り、
カウンター席に座らせた。
リュウ
どうぞ食べて…あっ、その前に
リュウは立ち上がって割り箸を二膳取った。
片方をCTに差し出すと、彼女は嬉しそうに笑う。
CT
これ……思ってたより固っ…
リュウ
そんな固くないって。ほら出来たじゃん
CT
割り箸割れた!
リュウ
ほら、食べなって
CT
じゃあ、いただきます



彼女がリュウに伝えたやりたい事は、

『割り箸を割りたい』『お寿司を食べてみたい』

というものだった。


お寿司を食べるにはスーパーで買うか店に行くか…せっかくなら店のを食べさせてやりたい。

でも高いのはな…


と考えた結果、回転寿司店に来たのだった。



リュウの目の前に"1皿90円+税"という字が吊るされている。

(そんな食べないだろ…15歳の女の子がそんなにたくさん、しかもしーの体型で)


ちらっと隣を見ると、既に建設された皿タワーが目に入った。

その奥にタワーがもう1つ。

そしてその奥にはがっつく少女。
リュウ
………
CT
こんな美味しいご飯初めて食べたの
リュウは注文確認のパネルを見た。


『本マグロ三種盛り』『えんがわ』


少し迷ってから注文取り消しを押し、
代わりにあおさ汁と茶碗蒸しを頼んだ。

クーポンを使うとどちらも無料になるのだ。
有難い。


「お会計、こちらになります。」


と示された画面を見て思わず笑ってしまう。
リュウ
1人でこんなに食べたのかよ
CT
だって…普段は緑の水しか貰わないから
リュウ
緑の水?どの時代の話だよ
CT
………
リュウ
ん?
「お釣りとレシートです。ありがとうございました!」



CTの何か言いたそうな顔も、
それを尋ねようとしたリュウの声も、
店員の声に掻き消されて2人は駐車場に向かった。

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