正午のチャイムが鳴り、リュウは時計を見た。
2人がバドミントンを始めてから1時間が経とうとしていた。
CTは、額に大粒の汗を光らせながら
少しだけ微笑んだ。
数分後
2人は回転寿司店に来ていた。
リュウは、店内のあちこちに目移りしてフラフラと
歩いている彼女の手を何とか引っ張り、
カウンター席に座らせた。
リュウは立ち上がって割り箸を二膳取った。
片方をCTに差し出すと、彼女は嬉しそうに笑う。
彼女がリュウに伝えたやりたい事は、
『割り箸を割りたい』『お寿司を食べてみたい』
というものだった。
お寿司を食べるにはスーパーで買うか店に行くか…せっかくなら店のを食べさせてやりたい。
でも高いのはな…
と考えた結果、回転寿司店に来たのだった。
リュウの目の前に"1皿90円+税"という字が吊るされている。
(そんな食べないだろ…15歳の女の子がそんなにたくさん、しかもしーの体型で)
ちらっと隣を見ると、既に建設された皿タワーが目に入った。
その奥にタワーがもう1つ。
そしてその奥にはがっつく少女。
リュウは注文確認のパネルを見た。
『本マグロ三種盛り』『えんがわ』
少し迷ってから注文取り消しを押し、
代わりにあおさ汁と茶碗蒸しを頼んだ。
クーポンを使うとどちらも無料になるのだ。
有難い。
「お会計、こちらになります。」
と示された画面を見て思わず笑ってしまう。
「お釣りとレシートです。ありがとうございました!」
CTの何か言いたそうな顔も、
それを尋ねようとしたリュウの声も、
店員の声に掻き消されて2人は駐車場に向かった。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。