私がまだ小学校低学年の頃。
私は、親や親戚など、近所の人から可愛がられていた。
私と佑美。
どちらかといえば、私の方が顔が整っていたから。
それに加えて、私は佑美よりも勉強や運動もできた。
その頃は、佑美よりも私の方が友達も多かった。
でもある日、それは起こった。
本を読むことが好きだった私は、日に日に本棚に増えていく本を不思議に思っていた。
私は、両親が知らないところで用意してくれたのだと思っていた。
いつしか本は本棚に収まりきらないまでになり、机や床に積み重なっていった。
何故か怒った表情で言う母親。
その隣に泣いている佑美の姿。
私は、母親が怒っている理由が分からなかった。
床に積み重なっていた本を母親が倒した。
いつもの優しい母親の姿はなくなっていた。
怒りのあまりなのか、床や机の本を狂ったように次々と倒している。
全く心当たりのないことに、首を横に振るしかできなかった。
佑美が私に近づき、そう言った。
その時の顔は今でも忘れない。
私とそっくりの顔が歪んだ悪魔のような笑みを…。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!