第69話

過去〜佑と佑美〜
2,065
2020/02/29 09:34
私がまだ小学校低学年の頃。
私は、親や親戚しんせきなど、近所の人から可愛がられていた。

私と佑美。

どちらかといえば、私の方が顔が整っていたから。
それに加えて、私は佑美よりも勉強や運動もできた。

その頃は、佑美よりも私の方が友達も多かった。

でもある日、それは起こった。

本を読むことが好きだった私は、日に日に本棚ほんだなに増えていく本を不思議ふしぎに思っていた。

私は、両親が知らないところで用意してくれたのだと思っていた。

いつしか本は本棚におさまりきらないまでになり、机や床に積み重なっていった。
お母さん
佑、話があるわ
何故なぜか怒った表情で言う母親。
その隣に泣いている佑美の姿。

私は、母親が怒っている理由が分からなかった。
お母さん
最近、お母さんの財布さいふから
お金がなくなるの。
お母さん
まさか……
お母さん
佑がぬすんでいたなんて、、
松原 佑
松原 佑
私…知らない!
松原 佑
松原 佑
私じゃない!
お母さん
何を言っているの!
お母さん
こんなたくさんの本を買って、言い訳できないわよ。
床に積み重なっていた本を母親が倒した。


いつもの優しい母親の姿はなくなっていた。

怒りのあまりなのか、床や机の本を狂ったように次々と倒している。

全く心当たりのないことに、首を横に振るしかできなかった。
松原 佑美
松原 佑美
佑ちゃん、ウソはだめだよ
佑美が私に近づき、そう言った。

その時の顔は今でも忘れない。


私とそっくりの顔がゆがんだ悪魔のようなみを…。

プリ小説オーディオドラマ