暫く歩き、高嶺が立ち止まったのは…人が滅多に来ない非常階段。
太陽の光が遮断され、昼間でも薄暗いこの場所は誰も近づかない。
今まで私が家に帰らなくても、佑美は気にも留めていなかった。
私の何が気にいらなかったのか…
それとも、用事があった?
ただ、文句を言いたいだけ?
自慢げな顔で、私を追い詰めたような気分になっているんだろうけど…普通のことだよね。
殺気を向けられたら、ただの一般人じゃないことくらい気づくでしょう。
それを、『俺は凄いんだぜ』的な顔をされても…
呆れを通り越して、笑いたくなるだけだから。
國代さんから、私の情報を荒らしている人物がいると連絡があった。
ダサい姿の私の情報を探ろうとする人なんて限られているし、この前も探ったと言っていたから、すぐに高嶺だと分かった。
私の物言いが気に食わなかったのか、今にもキレてしまいそうだ。
自分の意見が正しいと思い込んでいる残念な人。
話を聞いていると、自己中心的な考えで呆れる。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!