佑美の目が更に濁った。
私を見下ろす目が、“江原春樹を譲れ”と言っている。
私が春樹に微笑んだ。
白銀の幹部たちは、その顔が佑美に似ていることに驚き、更に目を見開いている。
春樹がムキになり、自分の後ろに私を隠した。
それを見て、佑美の表情が曇る。
2人とともに、止めていた足を動かす。
春樹を先頭に私と航が続く。
そう叫び、急に走ってきた奴に後ろから腕を引かれた。
振り向いた先にいたのは………
私の顔を見た陽太は目を逸らし、何かを言いたそうにしている。
そう言うと、陽太は眉間に皺を寄せて舌打ちをする。
私の言葉に陽太が瞳を左右に揺らし、あからさまに戸惑っている。
その隙に掴まれていた腕を振りほどき、1歩前へ進む。
陽太に背を向けて言った。
そして、振り返ることなく学校を後にした。
春樹が、私と色違いのバイクに跨がり、待っていた。
春樹の後ろに飛び乗ると、バイクを発進させた。
その後ろを航がバイクで追いかけてきている。
走ること30分で、その場所に着いた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。