永瀬が、今にも殴りかかってきそうだ。
殺気を抑えることもなく睨みつけ、周りの空気がピリピリしている。
幹部も下っ端も、永瀬の殺気に怖じ気づき、1歩後退した。
航が鋭い空気を醸し出したことで、永瀬が怯んだ。
誰も言葉を発することができず、息を呑んだ。
事の重大さに気づいた永瀬、幹部、下っ端が狼狽えた。
航が敵に回ることになったら、1番にそこを考えるでしょ。
データのセキュリティーを航に頼りきり、お粗末に
扱うからこんなことになるんだ。
倒れたままでいる私に航が近づいてきた。
立たせてくれるのかと思い、手を差し出した。
だが、握り返してはくれなかった。
不思議に思い、航を見ると…
意地悪そうな笑みを浮かべている。
そう言った航は、お姫様抱っこをしてきた。
ムカついたから、航の腕の中で暴れる。
私が暴れても余裕そうに笑っている航に更にムカつき、もっと暴れようとすると…
……トゥルルルル トゥルルルル トゥルルルル (←📱)
ポケットに入れていたスマホが着信を知らせた。
私は、表示されている名前も見ないで出た。
‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦通話‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦‧✧̣̥̇‧✦
こんな時間に電話してきたかと思えば…
この時間帯だと普通は、学校の時間に決まってるでしょう。
本気で泣きそうになっている春樹に同情した。
それだけ言い、一方的に切られた。
これだけで状況を分かってくれた。
春樹の声を聞き、安心したのか、自然と口角が上がる。
私たちを睨むいくつもの視線を背中に感じる。
その中でも、佑美の怒りに狂った視線が突き刺さってくる。
面倒事を終わらせるつもりで来たのに、むしろ逆効果だったかもしれない。
思わず出てしまいそうになる溜息を呑み込み、私と航は倉庫を後にした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!