第50話

2 航と白銀
2,266
2019/11/27 10:46
横山 航
横山 航
俺、白銀やめるわ
笹本 奏多
笹本 奏多
えっ?
永瀬 湊
永瀬 湊
は?
吉田 陽太
吉田 陽太
嘘だろ……
永瀬 湊
永瀬 湊
そのクソ女側につくのか。
永瀬 湊
永瀬 湊
…俺はお前を許さないぞ
永瀬が、今にも殴りかかってきそうだ。

殺気を抑えることもなくにらみつけ、周りの空気がピリピリしている。

幹部も下っ端も、永瀬の殺気に怖じ気づき、1歩後退こうたいした。
横山 航
横山 航
俺さー、先代に頼まれて残ってるだけで、白銀に執着しゅうちゃくしてねぇーのよ。
横山 航
横山 航
それと次、佑のこと“クソ女”つったら
許さないからな。
航が鋭い空気をかもし出したことで、永瀬がひるんだ。
吉田 陽太
吉田 陽太
俺たちを裏切って、どうなるか分かってんのか!
横山 航
横山 航
その言葉、そのまま返してやろうじゃないのー。
横山 航
横山 航
お前らの情報、誰が守ってやってると思ってんのよー。
横山 航
横山 航
次第しだいで白銀なんて、簡単に潰せるって分かってんのー?
誰も言葉を発することができず、息を呑んだ。

事の重大さに気づいた永瀬、幹部、下っ端が狼狽うろたえた。
松原 佑
松原 佑
(本当にこれで全国No.2なの?)
航が敵に回ることになったら、1番にそこを考えるでしょ。
データのセキュリティーを航に頼りきり、お粗末そまつ
扱うからこんなことになるんだ。
松原 佑
松原 佑
(…バカな奴らだ)
横山 航
横山 航
佑、帰ろーか
松原 佑
松原 佑
うん
倒れたままでいる私に航が近づいてきた。

立たせてくれるのかと思い、手を差し出した。
だが、にぎり返してはくれなかった。
不思議ふしぎに思い、航を見ると…
意地悪そうな笑みを浮かべている。
横山 航
横山 航
られて痛いでしょーよ?
そう言った航は、お姫様抱っこをしてきた。
松原 佑
松原 佑
下ろして。これはヤダ。
横山 航
横山 航
ダーメ。
ムカついたから、航の腕の中で暴れる。
私が暴れても余裕そうに笑っている航に更にムカつき、もっと暴れようとすると…
……トゥルルルル   トゥルルルル   トゥルルルル  (←📱)
ポケットに入れていたスマホが着信を知らせた。
松原 佑
松原 佑
(こんな時に誰だよ…)
私は、表示されている名前も見ないで出た。





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松原 佑
松原 佑
『もしもし、誰』
江原 春樹
江原 春樹
『俺だ』
松原 佑
松原 佑
『春樹か。何か用事?』
江原 春樹
江原 春樹
『今どこにいる?』
松原 佑
松原 佑
……(…は?)
江原 春樹
江原 春樹
『今どこにいる?』
こんな時間に電話してきたかと思えば…

この時間帯だと普通は、学校の時間に決まってるでしょう。
江原 春樹
江原 春樹
『学校で佑の警護を頼んでいる奴から、男と2人で校門を出てきたと連絡があった』
江原 春樹
江原 春樹
『…浮気なのか?』
松原 佑
松原 佑
『え?』
江原 春樹
江原 春樹
『佑は、そんなことしないよな?』
江原 春樹
江原 春樹
『俺は信用してるんだけど…。
草津さんが浮気って断言してきて…』
松原 佑
松原 佑
(草津さん、春樹をからかいすぎでしょ)
本気で泣きそうになっている春樹に同情した。
松原 佑
松原 佑
『今、白銀の倉庫を出るとこ』
江原 春樹
江原 春樹
『白銀だと…?』
江原 春樹
江原 春樹
『…迎えに行く。近くの公園にいろ』
それだけ言い、一方的に切られた。
松原 佑
松原 佑
(さすが春樹)
これだけで状況を分かってくれた。
春樹の声を聞き、安心したのか、自然と口角が上がる。
松原 佑
松原 佑
近くの公園に行って
横山 航
横山 航
りょーかい
私たちを睨むいくつもの視線を背中に感じる。

その中でも、佑美の怒りに狂った視線が突き刺さってくる。

面倒事を終わらせるつもりで来たのに、むしろ逆効果だったかもしれない。


思わず出てしまいそうになる溜息ためいきを呑み込み、私と航は倉庫を後にした。

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