だけど、小学生になると陽太は公園に来なくなった。
陽太とは学校が違うから会う方法もなかった。
祐美の嫌がらせは家の中だけでは終わらなかった。
私と仲のいい友達に『家で○○ちゃんの悪口言ってたよぉ?』とデマを流し、私の友達を1人…また1人と奪い取られた。
幼い私は、どうすれば誤解が解けるのか分からなくて、俯くしかなかった。
いつしか私は、学校でも独りぼっちになっていた。
その頃から、祐美と同じ顔を人に見られたくなくて前髪で顔を隠していた。
家にも学校にも私の居場所はない。
大好きだったアキくんとも会うことができない。
精神的に限界を迎えた私は…死にたいと思った。
使われていないビルの屋上に行き、フェンスを飛び越えた。
『やっと楽になれる』『これで解放される』
そんなことを思っていた私に恐怖心はなかった。
目を瞑り、足を踏み出した。
体が宙に浮き…“やっと解放される”と思った瞬間、後ろに強く引かれた。
宙に浮いた体は、元いた場所に戻されてしまった。
目の前に怒っている男子高校生がいた。
そんなことより私は、死ねていない現実に絶望していた。
その男子高校生は泣いていた。
なんで、この人が泣いているのか分からなかったけど…我慢していた何かが壊れたように私も泣いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!